佐藤克巳

女優と詩人の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

女優と詩人(1935年製作の映画)
5.0
「腰弁頑張れ」のスラップスティックコメディの傑作で評価された成瀬巳喜男監督が、再び放った喜劇は、女優妻千葉早智子と売れない詩人夫宇留木浩主演のスクリューボールコメディの怪作だった。妻の稼ぎに依存で頭が上がらない夫が、妻との初演舞台の台詞合わせの最中、現実の夫婦生活そっくりの筋立てで混乱。そこへ売れない文士藤原釜足が下宿を追い出されて2階に居候を安請け合い、それが台詞そっくりの夫婦喧嘩に火がつく。しかし焼け木杭に火がついた様に夫婦関係が正常化し、高邁な妻が献身的な女房に変身、亭主の居候話も円満解決。伏線の、隣の亭主三遊亭金馬が生命保険に加入させた心中カップルは命に別状はなく無事解決も笑えた。なお、宇留木は不幸にも翌年狭心症で亡くなるだけに、千葉の美しさと共にこの作品で永遠に記憶に留めたい。
佐藤克巳

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