YAJ

独裁者と小さな孫のYAJのネタバレレビュー・内容・結末

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

【文化を変える】

 良い映画でした。非常にストレートです。分かりやすいです。

 ただテーマは重く、難しい話。それを寓話のように、ユーモアも交えつつ余計な部分をそぎ落とし分かりやすく伝えてくれます。今の時代だからこそ観るべき作品だと思いました。

 一種のロードムービー。公式サイトを見てもらえば筋としても単純明快なのは分かってもらえるかと。
 ただ挿しはさまれる道中のエピソードがけっこう壮絶です。それはこの世の中の縮図だと思うのです。

「子供が棲むようなところじゃない」
「子供に見せるな」

 といった台詞が再三出てくるのですが、要は今の世の中って、子供、つまり次世代に見せてはおけない現状ってこと? こんな世界を残してちゃいけないってことなのでしょうね。
 暴力や復讐の連鎖は断ち切らなければならない、という大きく難しいテーマ。では、それを実現する手段は?

 イラン生まれで現在亡命中のM.マフマルバフ監督。イランでの革命経験者でもある。 ”革命”ってのは世の中をひっくり返して、過去を断ち、すっかり”変わる”ことと思われがちだけど、「何も変わらない」と言う(日経新聞コラム「語る」)。
 変えるのは指導者や体制ではない、人々の意識なんだろうな。マフマルバフ監督は

「人の頭が変わらなければ何も変わらない。人の頭とは何か。文化だ。」

 と言う(同)。
 映画という”文化”を使って、彼は変えようとしているのだろう。
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