全く知らない作品だったのだけど、飛行機の中の映画ラインナップにあったので鑑賞。これは驚きました。ものすごく素晴らしい映画だった。飛行機のおかげで見られたことに大感謝です。河瀬直美監督の作品は、あまり自分の好みと合わないこともあるのでどうかなーと思いつつでしたが、本当に素晴らしかった。タイトル通り、あん（餡子）がかなり物語の中で重要なモチーフなのですが、小豆から餡を作っていく工程の描写に、物事を見つめる眼差しの優しさや煌めきが象徴されているし、何より、樹木希林さんの芝居に心を掴まれる。永瀬正敏さんももちろん良いです。心無い人々の言動や、人間社会の力学によって、善意の人々のささやかな幸せが踏み躙られたり犯されたりする。その切なさとか無情さに悲しさを感じるとともに、そうした「心無い一派」に自分がならないようにしたいという自戒の念も抱けたし、逆に、「自分の心が豊かでさえあれば、心無い言動に本当の意味で屈服させられることもない」という希望も感じられた。餡子作りの描写とか、日本の四季折々を感じられる風景美とかもよかったなあ。出会えてよかった映画です。
