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エル・トポのnetfilmsのレビュー・感想・評価

エル・トポ(1970年製作の映画)
4.2
 黒装束の流浪のガンマン、エル・トポ(アレハンドロ・ホドロフスキー)は、幼い息子を連れ砂漠を行く。行き着いた村は山賊の襲撃による大虐殺の後で、あたり一面血の海だった。エル・トポは、修道院に陣取る大佐らを倒すが、大佐の女に心奪われ、息子を残し、最強のガンマンを目指し、砂漠にいる4人の銃のマスターに対決を挑む。やがて命を落としたエル・トポだったが、フリークス達の暮らす洞窟で長い眠りから目覚めた彼は、虐げられた境遇から救うべく再び現世と向き合うが、そこは彼の想像を超えた腐敗と混乱の世界だった。ご存知70年代屈指のカルト映画の金字塔にして、ミッドナイト・ムービーの伝説的古典としても知られる傑作。砂漠の中を漠然と彷徨い歩くうちに、山賊に囲まれ身の危険を感じるあたりはホドロフスキーによる西部劇の変奏のようにも感じられるが、主人公の超人的な強さが全てを呑み込んでしまう。やがてエル・トポは山賊を率いる大佐と呼ばれる人物を見つけ出し、彼の性器を鋭利な刃物で切り落とす。ペキンパーばりのえげつない暴力であったが、物語はここでは終わらない。

 大佐の女に入れあげたエル・トポは息子を村に置き去りにし、4人の凄腕の殺し屋たちにそれぞれ決闘を申し込む。ここで出て来る4人の男の強烈なキャラクター造形と住処がまた素晴らしい。大佐と山賊たちはまだわずかにケダモノの中に人間らしさを残していたが、この4人の殺し屋たちは完全にたがが外れた人物として描かれている。石で作られた円形の塔の中で暮らす弾の急所をずらす男も強烈だったが、大量のうさぎの死骸の中で改造銃を手にした男のパンチの利き方がまた強烈なキャラクターである。ラストにはピストルに対して、虫取り網で勝負を挑もうというおっさんも出て来る始末。ほとんど『ジョジョの奇妙な冒険』ばりの強烈なスタンド使い達が次々に出て来る。まるで勅使河原宏の『砂の器』のような全てを呑み込む砂地の中で、三角関係が織りなす倒錯的な性世界がやがて悲劇を呼び込む。たった一人でマシンガンのような小銃の嵐を受けながら、殺戮の嵐を繰り広げるクライマックスはかなりのカタルシスがある。西部劇やアメリカン・ニュー・シネマをも通過した新しい映画の胎動が、今作にははっきりと見える。
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