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恋するパリのランデヴーのakrutmのレビュー・感想・評価

恋するパリのランデヴー(2012年製作の映画)
5.0
バツ2・3人の子持ちで実業家の妻である女性シャルロットと自由な恋愛を謳歌しているミュージシャンの男性サーシャが惹かれ合っていく様子を軽快に描いた、ジェームズ・ユット監督のラブコメ映画。

ソフィー・マルソーが最も輝いた映画といえば、間違いなくデビュー作の『ラ・ブーム』(+その続編の『ラ・ブーム2』)であって、それ以降の出演作でこれらを超えるものはなかった。いろいろな役柄を演じてはいるが、固定化されたイメージを吹っ切るような思い切った役柄や演技は見せていなかった。そのような状況の中で40代後半となったソフィー・マルソーが出演した本作は、個人的には、『ラ・ブーム』と並ぶ彼女の最高傑作であると思う。随分前に初めて見たときからとても気に入っていて、何度も再鑑賞している。

まず本作でのソフィー・マルソーが素晴らしいのは、今までの映画で見せることのなかった見事なコメディエンヌぶりを発揮している点である。何度も出てくるズッコケシーンでは(一部はボディダブルかもしれないが)パンツ丸出しでずっこける姿まで披露していて、今まで演じてきた彼女には全く見られなかった、吹っ切れた演技である。もっと早い段階でこういう路線に変更しても良かったのではないかと思わせるほどの出来なのである。もちろんコミカルな演技だけではなく、この年齢になっても全く衰えない美貌を惜しげなく披露してくれるし、大人の色気も十分に見せてくれる。彼女に黒のガーターランジェリー姿なんかを見せられたら、もうそれだけでノックアウト間違いなし。

二人が偶然に出会い、お互いに一目惚れして付き合うようになるが、いろいろな困難が立ちはだかるというストーリーも、ソープオペラ的ではあるけれども、悪くはない。また、二人の恋愛とともに描かれるシャルロットの子供たちとサーシャの交流もスパイスとして効いているし、それが効果的なスパイスとなるのはサーシャを演じるガッド・エルマレの多才ぶりに拠るところが大きい。本作で知って、彼のファンになってしまった。フランスのコメディアンだけれど、最近はアメリカにも進出しているようである。俳優として映画への出演も少なくない。シャルロットの3人の子供の中で一番下の男の子が、最初は憎らしいんだけど、サーシャになついてからはめっちゃ可愛くなるのも◎

本映画の魅力はこれだけではなく、音楽もすごく印象的。そもそもサーシャが(ジャズクラブでピアノを演奏しているが、友人とミュージシャンで一旗揚げることを夢見ている)ミュージシャンという設定からして、音楽が本作のテーマのひとつであって、ガッド・エルマレがピアノの腕前を披露している。でもそれだけではなく、映画の中で使われる挿入歌が映像とマッチしていて、とても印象に残る。最初に二人が出会う場面で流されるエタ・ジェイムズの"A Sunday Kind of Love"とか、ハッピーなシーンで流れるリトル・スティービー・ワンダーの"Ain't That Love"など、本当にいいんだ、これが。また、シャルロットの寝室に貼られている『カサブランカ』の日本語ポスター(サーシャの部屋にも英語版の『カサブランカ』ポスターがある)とか、小道具も凝っている。ちなみに、カサブランカはガッド・エルマレの出身地であり、彼のスタンドアップでもネタとして出てくる。さらにちなみに、サーシャの部屋でソフィー・マルソーがガーターランジェリー姿で悩殺するシーンで壁に掛かっているポスターは『ドクターTの5000本の指』。
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