ユンファ

ガルム・ウォーズのユンファのレビュー・感想・評価

ガルム・ウォーズ(2014年製作の映画)
4.2
押井作品にしては退屈しない、というのが大方の第一印象ではないだろうか。
というのも、従来の押井作品に比べるとアクションが多く、明らかに金がかかっているからだ。
そして誰もが、尻切れトンボに感じられる結末に不満を唱えるだろう。
私もそう感じた。まるで「ガメラ3」のラストのようだと思った。
また、専門用語が容赦なく飛び交う作品ゆえに、話に置いていかれた観客も少なくないかもしれない。そうした方は、小説版「白銀の審問艦」を読むといい。厳密には同じ話ではないが、話の筋は理解出来るだろう。

では私なりの「ガルム・ウォーズ」の見方を語ろう。
ガルムとは冥界の番犬の意であり、アンヌンにおいて犬は神聖なものである。犬が神聖なのは、「イノセンス」な存在であるからだ。
神はガルムを創造し、破壊する。神とはねたむ神である。ねたむ神とはつまり、アレのことなのだが…とここまで考えて、私はふと思った。
ガルムを、そしてアンヌンを創造した神は、言うまでもなく押井守に他ならない。映画監督は世界を創造する。
犬が神聖視され、戦争が恒常化した世界。クローニングと記憶転写による、死のない世界。愛してやまない武器・兵器と、美しい女性が闊歩する世界。
それは押井守の理想郷だ。
「アバター」が、キャメロンにとっての理想郷を創造するための映画であったように、「ガルム・ウォーズ」は、押井守の理想郷を築くための映画だったのだ。

そう考えると、不満だったあのラストも好意的に捉えることが出来た。
映画監督(創造主)は、破壊と創造を繰り返す。結末など不要なのだ。
今日も何処かで、無限の世界が創造され、破壊されていく。
私の愛すべき夢幻の世界が。
ユンファ

ユンファ