totsu9piero

セッションのtotsu9pieroのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

狂気と狂気に引き寄せられる若い才能。
指揮者のカリスマの張り詰めた空気。練習でも一切の予断も許されない現場。音楽は壮大で心踊るような雰囲気なのに、それに似合わず奏者は常に厳戒態勢で、擦り切れるような心持ちで音楽を奏でる。観ているこちらまで張り詰めてきてしまう。
主人公が最初の少年のような出立ちからは予測もできない変貌。精神を擦り減らし音楽の出来だけを追い求める怪物になっていく過程は圧巻。
主人公を怪物へと引き込む指揮者は、部屋に入ってきただけでも感じる威圧感、気に食わない音楽に対する殺意さえ感じる眼差し、たまに垣間見せる穏やかな口調や態度。すべて存在感が違った。この作品全体の緊張感は指揮者が作り出している。音楽に対してのみ純粋な感情をぶつけ、奏者に対しては平気で嘘も吐き、汚い言葉で追い詰める。それも全て、一重に良い音楽を生み出すため。
もはや主人公は誰ともセッションしていないのでは、と途中まで思っていたが、最後の演奏で音楽を通して指揮者に訴えかける様を見て、完全に主人公と指揮者とのセッションだと感じた。主人公は失態でバンドを辞めさせられ、指揮者も主人公に摘発され教職を辞めさせられる。試されそれに応えるだけでなく、奪い合う。
音楽がメインの作品だが、最初から最後まで緊迫感が続く。手に汗握るような緊張感と差し迫った空気を通していて、見終わるまであっという間に感じるくらい引き込まれる素晴らしい作品だった。
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