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レフト・ビハインドのドントのレビュー・感想・評価

レフト・ビハインド(2014年製作の映画)
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 2014年。バカ!! 実家に帰省した女子大生。飛行機のパイロットである父親の不倫未遂みたいな現場を空港で見かけて嫌な気持ちになりつつ帰宅し、信仰の話をしようとする母親を押し止め、弟をショッピングモールに連れていく。が。なんとそこで弟を含む子供、多数の老若男女が服だけ残して消失! 飛行機の中の乗客・乗務員も多数消えた! 何が起きている!?
 ニコケイと飛行機こ雑ジャケで有名な本作ですが、どうですこの導入、面白そうでしょう。ところがダメなんだなこれが! 導入が長いし、地上のパニックは混乱からいきなり治安と人心の荒廃がひどくなるあたり段取りを飛ばしすぎ。飛行機の中のドラマもファーストクラスの中でみみっちいやりとりが続くだけで、みみっちさに面白味がありゃいいんだけどそれもない。地上の混乱と上空の騒動、どちらも展開や撮影や流れがガタガタすぎてなんともならない。特に切り返しだけの単調な会話シーンの多さ!
 こんなんなので「飛行機の緊急着陸」シークエンスをクライマックスに持ってこられてもなんとも盛り上がらない。ご予算の都合はあろうが「そんな狭い道路に着陸……イケる?」とか「街がメッチャ明るいけどその目印見える?」とかそういう些末なことがいちいち気になる。これ、テンション上がらないから気になるンすよね。勢いがついてたらウォーッと押し切れる。でも直前まで映ってたのは娘の車掃除とニコケイの困り顔だけ。アガらんよそりゃあ。
 ここからはネタバレなんですが、人間が消えたのは「携挙(ラプチャー)」つって、人の世が滅びに向かう前に神様が信仰の深い人や無垢な子供をヨイショッとばかりに天に引き上げてくれる、という現象だった、ということがわかる。そうなのよこれゴリゴリの宗教映画なの。しかも地に残された人は苦しみ嘆き悲しむし、飛行機はヤバいし、末世が来ちゃうし、要は脅しなんですよね。宗教映画は北米ではポツポツ作られてるんですが、だいたい「信じてたらいいことあった」映画で、こういうのはあまりない、はず。
「信じないと取り残されるぞ!」と描くのは、なんつうか、品がないというか、無理強いっぽくてスマートじゃない。かと思えば信仰に厚い人は「ちょっと変わった人」みたく描かれてるし、クライマックスは信仰の目覚めじゃなく飛行機の着陸だし、これ、逆に失礼じゃね? 神様とか信仰者とかキリスト教に、と思う。信仰に厚い人は「ざまぁ」とか感じるのかな。それもどうなのかしら……
 一方で空のベビーベッドが並ぶ病院とか、「ああッそうだったのかッ」と軽く悶絶するニコケイとか、アホみたいな飛行機ニアミスとか、無の映画というわけではない。しかし、よくないなぁ、と思うんですよ。誠実さに欠けるというか。で、なぜこれを急に観たかと言うと、今週全米で本作の親類『レフト・ビハインド ライズ・オブ・アンチクライスト』が公開されてトップ10に入っていたから。いやぁ、どうなっとるんでしょうね世の中。
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