♪ 乾いた風に吹かれ 独りきり歩いてる
忘却の空へたどり着けるまで
額縁屋の奇妙な冒険。
泥棒を撃ち殺したことから彼の人生は狂い始めた…なんて冒頭から、スリラー寄りのサスペンスを期待していたのに、気付けば遠い空の下。まるで少年漫画のように節操のない作品でした。
でも、これがいいんだよ!
節操のない物語だから“いい”んじゃあないかッ!と言いたくなるほどに先が読めないのが面白いわけで。道を究める一貫性も大切ですが、どこに辿り着くのか?という探究心も大切なのです。
しかも、ジム・ミックル監督の筆致が絶妙。
相も変わらずの哀愁が“無言の男の詩”を感じさせ、気付けば敬礼をしてしまう味わいがあるのです。心に残る作品が名作と呼ばれるのならば、確実にその範疇に入っています。
ただ、残念なことに配役がマイナー。
これが巷の評価が上がらない要因でしょうね。
メル・ギブソンあたりが出演していたら話が違ったかもしれません。勿論、本作の俳優さんたちも見事ですよ。いぶし銀の味わいが素晴らしいです。
それでも主人公の影の薄さは…いやいや。
それだって大したことはないのです。
少年漫画で主人公が変わる話なんてザラにあるじゃないですか。髪型をバカにされると怒る主人公よりも、精神的成長をグイグイと見せてくれる少年が格好良い…なんて作品だってありますからね。
あと、美女が出てこないのも残念…いやいや。
それだって、大したことはないのです。
某少年漫画なんて主人公が女性なのに、思考も行動も男性(親友も「兄貴」と呼ばれる始末)。鉄格子を見ていたらムラムラした…なんてところにしか萌えポイントが無くても面白かったのです。
だからッ。
小さなことに拘らずに鷹揚な気持ちで、そして期待値は地面スレスレで。徹底的に甘い眼で臨めば面白い作品なのです。“第一印象”に囚われたら負けなのだッ。
まあ、そんなわけで。
監督さんの筆致が好きなので擁護してばかりですが…映画は楽しんだもの勝ち。「違う違うこんなんじゃない」と低評価を付けるよりも、面白い部分を探したほうが得だと思います。
勿論、それでも肩が下がる場合もあるんですけどね…。はふん。