わっしょい

予告犯のわっしょいのレビュー・感想・評価

予告犯(2015年製作の映画)
4.5
人は動く。それが誰かのためになると思えば。

原作は全3巻の漫画。
サクッと読めるので3周くらいしたことがあったけど、映画を観るのは初めて。
率直に言って、改変も含めてすごく良かった。

キャラの掘り下げが原作よりもあったと思う。
それぞれの夢とか、過去とか。
どれもプラスに働いていて、感情移入しやすかった。
主人公ゲイツとそれを追う警察吉野が似たような過去を持っているのも、2人の絶妙な関係性により深みを出していた。

吉野がゲイツを追うシーンがかなり長めに取られていたのが印象的。
どこまでも追いかける吉野。
どこまでも逃げるゲイツ。
最後には暗い用水路に逃げ込んだゲイツに追いつけなくなり、日の差した明るい入口から吉野が呼びかける。
「境遇のせいにするな」と。
ゲイツは「あなたには分からない」と返す。
これがすごく象徴的で、大事なシーンに感じた。
勿論、成功している人は皆努力しているし、中には厳しい境遇だった人もいると思う。
けれども、その努力すら許されない境遇の人もいる。
その事実は忘れられがちで、世の強者たちは彼らが努力できない奴だと勝手にレッテル張りをする。
文字通り、相容れない光と影のような存在だと思わされた。

象徴的な「あなたには分からない」というセリフは、後半にゲイツを庇ったネカフェ店員も言い、後にこう続ける。
「大きなことでなくても人は動く。それが誰かのためになると思えば。」
これが本作の言いたいことだと思う。
損得勘定を超え、自己犠牲的に行動する。
世間を生き抜いた強者はしないような、そもそも考えないような行動方針。
失うものの無い、弱者とされる社会のレールに乗れなかった人たちの取る行動。
その美しさを見せつけられた。
わっしょい

わっしょい