瀬田なつき監督作品と聞き、鑑賞。
[あらすじ]
不動産で働く冴えないアラサー男性と、昔、住んでいた家を探す少女。
2人の交流を描く少し変わったロードムービー。
[感想]
導入からは、想像できない驚きのSF展開。
低予算ながらも、独特な空間設計や小道具を活かしたアイデアが冴え渡っており、『インターステラー』や『メッセージ』にも通ずる「時間と愛」という題材を見事に描き出していた。
[独特な空間設計と小道具]
クライマックスにおける部屋の一室の演出は、特に印象に残った。
まるで巨大商業施設の中のキッズスペースのような暖色のセット、窓から見えるアクアリウム映像、そして、ビデオカメラとブラウン管テレビを活かした"あるアイデア"。
このシーン以外でも、リアプロジェクション(乗り物から見える風景を、スクリーンに投影した映像で表現する手法)を活かしたバスのシーンなど、印象に残る場面が多く、「幻想的な世界観」と「場所の永続性」を見事に演出していたように思った。
[瀬田なつき作品として]
瀬田なつき監督作品としては、後の作品にも繋がるこれらの要素が興味深かった。(以下、箇条書き。)
・主人公のモノローグ
・真っ赤な小道具
・鼻血
・街
・鍵盤ハーモニカを使用した音楽
・橋
・二者の関係性
・空を横切る飛行機
・異なる世界が並列されるクロスカッティング
また、同時期に東京藝術大学に通っていた縁からか、濱口竜介監督がコンビニ店員として、数秒カメオ出演している部分にも、個人的にテンションが上がった。
[おわりに]
瀬田なつき監督の原点が確認できる本作。
監督の長編は作品を増すごとに、演出のクセが強くなっている印象があり、そこが苦手でもあるので、比較的シンプルな本作は、個人として一番好みな長編作品だった。
参考
木下美紗都 "それからの子供" CM2
https://youtu.be/wTg2QMqE44E
(本作の主題歌『彼方からの手紙』が使用されたアルバムCM)