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ジャングル・ブックのYAEPINのレビュー・感想・評価

ジャングル・ブック(2015年製作の映画)
3.7
オープニングのディズニーロゴがまさかの2Dアニメーションで驚いた。
エンドロールも含めて、トラディショナル・ディズニーアニメーションへの敬意が感じられる。

私は1967年制作のディズニー『ジャングル・ブック』が好きで、超実写版は正直興味がなかったのだが、評判の通りほとんどの部分で適切にアップデートされた良いリメイク作品だった。

まず、ジャングルの映像が美しく興味深かった。
「乾季がきて、景色は黄、茶色、黒に変化する」というナレーションは詩的な表現である。ジャングルの季節の変化なんて当然ながら見たことはないため、好奇心がくすぐられる。
さらには、水がほとんど干上がってしまい、普段は池の中にある岩の先端が顔を出した状態を平和の象徴に見立て、休戦協定を結んでいるのも面白い。

その荒涼とした大地で、主人公モーグリが道具を使う様子はかなり異質な存在で際立って見える。
狼のように早く走れない、虎のような牙もない、象のように大地を踏み鳴らすこともできない。多くの動物よりも身体的に劣るからこそ、脳を使って道具で生きる道を切り開くのだ、という人間の特異性がビビットに映し出されていた。

一方で、人間の技を妬み羨むキャラクター、キングルーイもダークな存在感を放っている。
巨大な石造りの神殿の最奥に鎮座する姿には、ジャバ・ザ・ハットを思い出した。
アニメーションではそこ抜けた明るさを持つ"I Wanna Be Like You"が、こんなにも恐ろしい曲に聴こえるとは。
新しい演出で新鮮だった。

ただ元のアニメーションでは、このブラックミュージックを白人が演じていることで問題となったようだが、本作でも白人のクリストファー・ウォーケンが声優を務めているのは大丈夫なのだろうか。

さらに気になったのは、最後にモーグリが犯した過ちが致命的であるという点だ。
もちろん悪気はないとはいえ、あらゆるジャングルの生命線と生態系を破壊する行為であり、動物たちが彼を守ろうとする姿に理解が出来なかった。
むしろ、シア・カーンが人間を危険な存在として排除しようとすることの方が納得がいく。
大方の動物は逃げおおせたような表現だったが、彼らの家も、草食動物が食べる草木も、小動物が食べる小さな虫もかなり失われたことだろう。
人間の生き抜く術であるところの道具が、時として自然界を驚くべき範囲で壊滅させうるという事実が突きつけられる。
それにきちんと向き合わず不慮の事故として一件落着させるのは、いくら何でも人間に甘すぎる展開だと思った。

それまでのシーンで、私たち人間はモーグリと一緒に多種多様な生き物を目の前にし、驚き、彼らとの共生の道を模索していたはずなのに、かなり残念な帰結だった。
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