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枯れ葉のYAEPINのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.3
初めてのアキ・カウリスマキ。

うだつの上がらない人々が、バーでうだつの上がらない会話をしている様子がただ映されるあたり、ジム・ジャームッシュと似た雰囲気を感じたが、『デッド・ドント・ダイ』が引用されていて笑ってしまった。
固定カメラで映された、小さなテーブルに向かい合う2人や、壁にもたれ掛かり虚ろな目でタバコを燻らす男など、彼の作品を思い出すカットが多くあった。
案の定、ジム・ジャームッシュとは親交が深いらしい。

ただ、本作では社会問題への真摯な眼差しが色濃く表現されている。
ラジオをつければ常にロシアによるウクライナ侵攻のニュース、ロマンスに発展したくても失業やアル中に悩まされる主人公たち。
フィンランドは福祉の充実した楽園だと思っていたのでかなり意外だったが、失業率を調べると確かに日本よりも高い数値を示している。

暗いニュースに蓋をするようにラジオのチャンネルを変えると歌謡曲が流れる。全編通して音楽が常にかかっており、荒んだ社会に不思議な癒しをもたらすようだった。

作品のダウナーな雰囲気に反して、画面の色彩は非常にカラフルである。
登場人物の服や建物の内装には、ほとんど常に北欧らしいパステルカラーが織り込まれている。
終盤、主人公のアンサが何度も着ているコートの色が水色から紺に変わるのが印象的だった。新たな生活へのささやかな希望が感じられる。

ずっとむっつり顔の彼女が、あの報せを聞いて初めて独りでに笑みをこぼすシーンに、何故だか胸が締め付けられた。
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