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ヘウォンの恋愛日記のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ヘウォンの恋愛日記(2013年製作の映画)
3.8
 2012年3月、女子大生で女優志望のヘウォン(チョン・ウンチェ)は久しぶりにカナダに旅立った母親(キム・ジャオク )に会う。期待に胸を膨らませた彼女は空調にやられ、気持ち良くうたた寝する。夢の中で彼女は、ジェーン・バーキンに出会う。ウェスト・ビレッジの場所を聞かれたへウォンはようやくバーキン本人だと気付き、手帳にサインを貰う。上等なプーアル茶をプレゼントした娘は、久しぶりの母親との水入らずの時間を楽しんでいる。ミス・コリアがダメなら、モデルになりなさいと助言された彼女は、公園の中をハイ・テンションで歩く。だがチュンノ図書館を抜けて、「有名荘」という名の旅館を越えたあたりで彼女の表情は曇る。大学で不倫相手のソンジュン(イ・ソンギュン)と初めて結ばれた思い出の場所、立ち入り禁止の公園に侵入したへウォンは、歩きたばこの吸い殻に苛立つ。偶然立ち寄った古本屋、「人と出会い、また躊躇う」と書かれた古本の文章、不意に寂しさに襲われた女は、不倫相手で仲の切れかかったソンジュンを電話で呼び出す。男の「会いたかった」という言葉に戸惑いを隠せないへウォンは、2人で行った焼肉店の前で同僚の学生たちと鉢合わせする。

 女優を目指しながら、なかなかチャンスに恵まれない女子大生と、監督でありながら鳴かず飛ばずで、大学の講師に仕事で糊口を凌ぐうだつの上がらない男の恋は、最初から明るい未来などない。だが女は母親の去った寂しさから、終わりかけた恋にまたしても火を付ける。イ・ソンギュン扮するソンジュンは、早朝に書いた大学への辞表を見せるなど大胆不敵な男に見えて、他の学生への体裁を気にする情けない男として描かれる。南漢山城に2人で登った不倫カップルは途中、年上のソンジュンの嫉妬により居た堪れない事態になる。今作を特徴づけるのは、彼女が細かく書き込んだ日記が、果たして現実かそれとも夢なのかに尽きる。駐車場でタバコを吸っていた男性、アメリカの教授、南漢山城で2人と別々に出会った登山客のおじさん。その姿はヘウォンの具現化した欲望なのか?それとも本当にそこで出会った人々なのか?映画は最後まで事実を明らかにしない。夢うつつな女子大生はたばこの吸い殻を何度も踏みながら、公園の柵への侵入や南漢山城への登山を繰り返す。ケガをした男のキズ、携帯電話の留守番電話、男の手に握られたカセット・ウォークマン、左手に巻かれた安物の時計、スコセッシ監督への電話とマインド・コントロール、ラーメンとのり巻き、映画はもっともらしい描写を繰り返しながら、やがてヒロインにある決断を促す。その決断だけが具現化された真実となる。
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