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セールスマンの死のHKのレビュー・感想・評価

セールスマンの死(1985年製作の映画)
3.8
原作は言わずと知れたアーサー・ミラーの古典的戯曲。
何度も舞台化も映像化もされていますが、本作はフォルカー・シュレンドルフ監督(『ブリキの太鼓』)、主役のセールスマンをダスティン・ホフマンが演じたTVムービー版。
重くて暗くて辛い内容だとはわかっているため、ずいぶん長い間クリップしたままコンディションの良い日をうかがっていましたが、ようやく鑑賞。
やっぱり重い、暗い、辛い・・・救いようがない・・・

初老のセールスマン一家の、主に父親と長男の確執、そして家族の崩壊が描かれます。

1951年の映画版の主役はフレデリック・マーチ、ブロードウェイではリー・J・コッブが当たり役だったそうで、他にもジョージ・C・スコットやブライアン・デネヒーなど総じて大きくてガッシリした体格の、どちらかと言うとコワモテの役者が演じていますが、ホフマンだけが異質な印象で前から気になっていました。

当時48歳のホフマンは63歳の老けメイク。
チビで眼鏡で頭は禿げ上がり、やはり他の役者たちのイメージとはかなり違います。
ただ、性格はまさしく本作の主人公であるウィリー・ローマン。
過去の栄光が忘れられず、見栄っ張りで自己中で卑屈で妻や息子を怒鳴り散らし・・・
これまでホフマンが演じた中でも最もイヤな奴、そして最も哀れなキャラかもしれません。
日本だと、典型的な昭和初期のオヤジというか・・・

そして今回、長男を演じるのは、禿げメイクのホフマンに対し、まだ髪の毛タップリ(それとも、すでにカツラか?)のジョン・マルコビッチ(当時32歳)。
これまた人気者だった学生時代が忘れられず、定職にもつかず手クセも悪く、父親とぶつかってばかりの長男役。

全く目もあてられない親子ですが、私自身や家族とも重なる部分があるため観ていて本当にいたたまれません。ある意味、地獄の責め苦といますか・・・

このシュレンドルフ版もやはり舞台的な演出多し。
ホフマンは本作でゴールデングローブとエミー賞の主演男優賞、マルコビッチはエミー賞の助演男優賞を受賞。
音楽は1951年の映画と同じく、1949年の初演舞台(エリア・カザン演出)時と同じアレックス・ノースのスコアが使われています。
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