Jeffrey

トラックのJeffreyのレビュー・感想・評価

トラック(1977年製作の映画)
3.0
「トラック」

冒頭、パリ西郊イヴリーヌ県。デュラスとジェラール・ドパルデューが座っている暗室。2人の対話、質問と朗読、住宅団地、工場、鉄道分岐点、畑、林、二面性、過去と現在、ヒッチハイク、運転手と婦人。今、政治的要素が含まれる話が始まる…本作はカンヌ国際映画祭に出品され、主演にジェラール・ドパルデューを迎え、マルグリット・デュラスが1977年に監督、脚本を務めたフランス映画で、この度BDにて初鑑賞したが非常に静かで暗い映画である。基本的には監督と役者のドパルデューが質問をし、彼女が答えたり朗読したりするのが写し出される。それから彼女が彼女自身として映画で姿を晒し、1人称で語るのだ。どうやら1人称で語ったのはこれが最初で最後のようだ。なんといってもふくよかなドパルデューと小柄なデュラスとの対比がユーモラスで面白いとの事だが、確かにそうである。

徐々に役者も朗読に加わり、運転手のセリフをデュラスとともに幻の映画を見たりするようになり、そこでフレーミングとカメラワークと照明の美しさと的確さが前面に押し出てシネフィルを驚かせるだろう。どうやらかつては社会主義の正義を多くの人々と共に信じていたことや、プラハの春を圧殺したソ連の侵攻(チェコ事件、1968年8月)を契機に、婦人が社会主義を資本主義と共謀した反革命的なものとみなすようになったことがほのめかされているようで、伝記的に言えば、1940余年に入党したフランス共産党、1950年に入り離脱し、党主導では無い68年5月革命には学生、作家行動委員会のメンバーとなって積極的に参加したデュラス自身の経験が反映されているとのことだ。ただ映画自体との関連で興味深いのは、ヒッチハイカーによる共産党批判がもっぱら輝かしい言葉、革命、階級闘争、プロレタリア独裁に対する不信と言う形をとっているとの事である(引用)。さて、物語は、目的地もなくヒッチハイクを繰り返す年配の夫人と若いトラック運転手との会話をとらえた映画である。とりわけ広島と言う言葉が出てきたり「二十四時間の情事」に言及しているかと思われる場面がある。
Jeffrey

Jeffrey