デニロ

濡れた唇のデニロのレビュー・感想・評価

濡れた唇(1972年製作の映画)
3.5
1972年製作公開。脚本こうやまきよみ(山口清一郎、神代辰巳)。監督神代辰巳。1977年銀座並木座。1995年亀有名画座。過去2回観ているのに観たという記憶しかなかった。ストーリーなんて覚えていない。冒頭に山科ゆりがあらわれて、え、重そうなロングヘア。これも忘れてた。駄目よダメダメ、と婚約者の手を払ううぶな娘役。彼女、まだ10代だったのです。本作では、嵯峨正子名でクレジットされている。

コールガール絵沢萠子にホテルで逃げられた谷本一を観て、コロナ禍直前、20年振りに会った友人の笑い話を思い出した。曰く、自由恋愛目的でホテルに派遣されてきた妙齢の女性に約束のものを渡すとシャワーに入りたい。シャワーから出て来ると、/ああ暑い、ロビーで何か冷たいものを買ってくるわ。/飲み物なら冷蔵庫に入っているよ。/違うものが欲しいから買ってくるわ。/と、そそくさと着替えて部屋から出て行ったそうだ。で、10分経っても戻ってこないので、事の重大性に気付く。フロントに電話すると、知りませんよ、そんなこと、とにべもなく言われる。ホテルと女グルに違いない、と。

谷本一は絵沢萠子に惚れてしまい、婚約者の山科ゆりに嘘までついて出奔してしまう。意味が分からない。頑なに拒む山科ゆりの清純よりも、崩れているとはいえ生々しい絵沢萠子のカラダの方がよいのだろうか。

ひょんなことから殺人を犯してしまった二人は逃げる。絵沢萠子の故郷に向かうが警察の手が伸びていて、という話。彼の地で友人カップルに助けられるも、いつしか男女入れ替わって更にセックス三昧。セックス三昧で絵沢萠子の裸を見せつけられるのだが、その後の作品でも絵沢萠子あの崩れたカラダに当たった時も思ったのですが、何で彼女を観なくちゃならんのだと外れ気分を味わったものです。

ラストは乾いたフランス映画風で、絵沢萠子と谷本一のすれ違う心情が溢れかえって索漠としています。

ロマンポルノ創世期の作品で、監督の神代辰巳も主演の絵沢萠子も初めてのロマンポルノで震えながら撮っていたと、神代監督がどこかのインタヴューで答えていた。観ているわたしは冷ややかな表情の絵沢萠子にそんな気配を感じることはあんまりなかったのですが。この後わたしは、沢山の彼女の裸をわたしの好むと好まざるとに関わらず観る羽目になるのです。絵沢萠子さんのご冥福をお祈りいたします。

国立映画アーカイブ 逝ける映画人を偲んで 2021-2022(出演/絵沢萠子) にて
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