福福吉吉

柘榴坂の仇討の福福吉吉のレビュー・感想・評価

柘榴坂の仇討(2014年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
彦根藩士の志村金吾(中井貴一)は藩主の井伊直弼(中村吉右衛門)の護衛についていたが、桜田門外にて水戸浪士の襲撃を受けて井伊直弼を死なせてしまう。その失態から金吾の両親は自害し、金吾自身は切腹を許されず、襲撃した水戸浪士を討ち取るよう命を受ける。しかし、金吾は水戸浪士を一人も討ち取ることができず、時間が過ぎていき...。

◆感想◆
桜田門外の変で井伊直弼を守れなかった志村金吾が仇討ちのために水戸浪士を追うも時代が変わり、藩も武士もない世の中になります。それでもひたすらに武士として金吾が仇討ちを続ける生き様とそれに関わる人々の思いを描いた作品となっており、主要人物たちの思いが上手く伝わるように丁寧に描かれています。

志村金吾は政治に疎く、ただひたすらに井伊直弼のために尽くす人物として描かれており、清廉さが伝わってきました。それがゆえに金吾は、時代が変わろうとも仇討ちを果たそうとしており、その決意の固さに融通の利かない感じがしました。

金吾の妻であるセツ(広末涼子)は金吾を支え続けるのですが、金吾が仇討ちに成功すればその後、金吾が切腹することが避けられないことが分かっているので、金吾を笑顔で迎える中でもどこか悲壮感があって、観ていてとても切なかったです。

本作の肝である幕末から明治への時代の変化とその中でも息づく金吾の武士としての信念は、ストーリーにかなり重みを増していて、観ていて息苦しさを感じる部分がありました。金吾は桜田門外の変から13年かけて仇を追っているのですが、その存在はかなり浮いていました。それでもそんな彼の武士としての生き様に共感をもつ人物も現れ、彼が身分でなく覚悟の部分で武士であったことを示しているように感じられて心にしみるものがありました。

ストーリー後半には金吾の最後の敵が明らかになり、それぞれの生き様が交錯していきます。ハッキリ言って重い展開ですが、これが非常に良い。敵役の演技もとても素晴らしかった。

時代劇ならではの重厚さと心理描写の丁寧さがとても良くて楽しめました。

鑑賞日:2023年11月8日
鑑賞方法:BS日テレ
(録画日:2022年9月15日)
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