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複製された男のEDDIEのネタバレレビュー・内容・結末

複製された男(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アダムが大学講義で語る“独裁者と支配”の暗示するものとは。ドゥニ・ヴィルヌーブが男の欲求の行末を表現。理解不能なアプローチも考えれば考えるほど色んな解釈が出てくる最高の考察映画。

「カオスとは未解読の秩序である」
本作で冒頭に示される“対立の書”の一文。この“対立の書”自体は原作に出てくるもので、架空の書物のようですね。ただこの言葉が本作のテーマを明示しているんですよね。

私自身本作は2度目の鑑賞で、5年前ぐらいにDVDで観た時ちんぷんかんぷんでした。色んな考察記事も読みました。その上で鑑賞すると、作中の演出やセリフに伏線が散りばめられていて凄く楽しく観ることができました。
もちろん初回は一切の情報シャットダウンして観ていただきたいですが、2回目以降は色んな考察読んだりして自分なりの答えを導き出した上で鑑賞するとより楽しめる作品だと思います。
当時は私がジェイク・ギレンホールにハマり始めたときでした。元々知っている俳優でしたが、『ナイトクローラー』観て彼の役者魂と演技に魅了されてしまい、手をつけたのが本作。その時はまだまだ私も青かったようです(今でも青いですが)。

ということで本作は全くネタバレなしで語ることは難しいので、以下ネタバレ要素も入れながらレビューしていきます。未鑑賞の方は回れ右することをオススメいたします!





原題“Enemy”とは「敵」ですね。じゃあこの敵って誰のことか。本作を観た方ならすぐに答えは出せると思いますが、つまり“自分自身”なんですよね。
主人公はアダムという冴えない大学教員。決して裕福な暮らしではありませんが、恋人のメアリーと幸せに暮らしています。
とある日、職場の同僚からオススメされた「道は開かれる」という映画。ここで素直に映画を借りに行くところに愛おしさすら感じるわけですが、その映画のホテルのボーイ役で自分と瓜二つの人間が映っているわけですね。これは驚きとばかりにその俳優のことを調べるとアンソニー・クレアという人物に辿り着きます。果たしてこのアンソニーって誰なんだ!?というミステリーのような冒頭。

しかし、本作のキモはそんなミステリー要素じゃないんですね。
本作が語る主題はまさに“男の貞操観念”。なんだ二重人格なのか?生き別れた兄弟がいるのか?SF的要素でドッペルゲンガーみたいな存在がいるのか?色んな考察ができるわけですが、言ってしまえば俳優ジェイクが演じているそのままなわけです。つまりアダムがアンソニーのフリをして一人二役しているんですね。
その結となる部分を知っていると本作のセリフ一つ一つが意味深にしか聞こえません。

序盤でアンソニーが妊娠6ヶ月の奥さんヘレンに「またあの女と会ってるの!?」的な発言をされるんです。何も考えなしにさらーっとこのセリフを聴くと、この売れない俳優は浮気とかしてたんだなぁぐらいにしか思いません。ただこれってアダムの彼女のメアリーのことを言ってるんです。だからヘレンはアンソニーの言う自分に瓜二つの人間の存在に対して、執拗に「ウソでしょ?ウソよね?」と捲し立てるのです。要はヘレンはすべて気付いていたわけですよ。こういうのがわかってくると面白い〜ってなりますよね。

アダムが母親に瓜二つの人間の話を持ちかけ相談した際にも「三流役者とそっくりなんて話はやめて!」とか「教員をやってて住まいも立派よね」とか、ちょっと矛盾する話をするんです。
なぜ作品も観たことないはずなのにいきなり三流なんてわかるんでしょうか。また、教員のアダムの家は決して立派ではないボロアパート。立派な家に住んでるのは俳優のアンソニーの方です。
つまりここが彼らが同一人物だと判明するヒントになっているんですね。
要は売れない役者をやっていたアダムは妻の妊娠をきっかけに大学教員に転職して真っ当な道を歩み始めたんです。

だけど、抑えきれない性欲。秘密クラブへの参加。もう男の欲望は爆発寸前とばかりにメアリーのもとへ足を運んでしまうわけです。
ラストの部屋の片隅にいる巨大な蜘蛛の暗示。本作ではたびたび蜘蛛が登場するわけですが、六本木ヒルズにあるママンのオブジェ、これを知っていれば自ずと答えには辿り着けると思います。ママン=母親の象徴で、性的欲望を抑えつけてくるわけです。アダムが浮気しに出かけると察知した妻を蜘蛛の姿に見立てたというわけですね、きっと。


なんかこんなことを言ってしまうと怒られそうな気もするんですが、メラニー・ロラン演じるメアリーのような妖艶な美女が恋人となるんだったらそれは男の欲望も抑えられないよなぁと。あ、私がただメラニー・ロランのファンというだけなんですけどね。『グランドイリュージョン』のメラニーなんてとても美しくて画面に映るたびに食いついて観ていたほどです。

まぁそんなことは置いといて、考察にふけるのがこんなに楽しい映画もなかなかないと思います。もちろん浮気はダメだと思いますよ!けど、映画の中ですから。蜘蛛に会いたくなければ浮気なんてしないと男性陣は心に決めましょう(もちろん女性は浮気OKと言っているわけではないですよ笑)。
男女互いにコミュニケーション取って信頼関係を築いていけたらいいですよね(テキトー笑)。

※2020年自宅鑑賞187本目
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