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紙の月のqpのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
4.5
 梨花は人当りがよく、幸せそうな夫婦の妻で銀行の契約社員で働いています。不倫をきっかけにお金が必要になり、会社のお金に手を付けていき、という話です。

 梨花は真面目で堅そうですが、きっかけがほとんどない中で大学生の光太との不倫が突然始まります。全く共感ができずに、ずっとリカは家庭に仕事に我慢してたんだろうな、やりたいことをやっていない空虚感があるんだなと想像します。

 横領、その後エスカレートするほど光太に入れ込んでいる理由がずっと分かりません。梨花が大人しいからそこまでに見えないだけかもしれません。

 銀行には色々な人間関係があり、性格の人がいます。隅さんが一番不憫に感じます。会社全体のことを思って、相川さんを一人前に育てようとしているのに、煙たがられてしまいます。自分もお金の流れを気になって勉強してしまったり、全体のことを考えてしまうので、将来こうなってしまうのかと不安になります。

 相川さんもよくいそうですよね。もともと仕事続けるつもりがなく、怒られても体よく謝って済ませます。うわさ話に力入れていて、仕事する気もありません。ここに若い女性に弱い男の次長も絡んでいきます。こういう風に生きられれば良いなと思ってしまいます。

 観ているだけで信頼できる梨花でしたが、弱みができてから人が変わります。人を脅すようになったりするのですが、この弱みは賭けたい者ができたからと見えます。

 でも、初めは優しかった光太もいつの間にか変わっていき、やってもらうのが当たり前と横柄になっています。序盤の遠慮や募金活動などは演技なのかと思ってしまいます。

 最初に平林がお金を貸すことにした理由に納得させられます。梨花が相手のことを思っていた誠意からお願いが成立したのに、梨花が大きく変わってしまっていることも見て取れます。

 梨花は子供の頃からそうだったのかと納得します。持っている者から持たざる者へと分け与えるのは重要ですが、色々な道徳観があった上で成立します。持っている者が持っている理由も考えなければいけないと思います。

 本作では横領のやり方を観られてよかったです。というのも、単純に金庫からお金をとっているだけかと思っていました。当然、色々管理していますのでそんな単純ではないのですが、その管理の裏を突くような工作をしているのが面白いです。

 また、出演者の演技や銀行の演出が良かったです。絞られた人たちがうまく重苦しい雰囲気を出していて、日本の会社で起こる日本人の話だなと思いました。
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