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FULL METAL 極道のMASHのレビュー・感想・評価

FULL METAL 極道(1997年製作の映画)
4.0
三池崇史監督によるOV作品。冴えない下っ端ヤクザの主人公はがある時、組の陰謀により尊敬していた兄貴分と共に殺される。だが、彼はマッドサイエンティストにより全身鋼鉄のサイボーグとして蘇る。そして、自分と兄貴分を殺した組への復讐を始めるのであった、というのがあらすじ。

くだらないと一蹴されそうな作品だが、そうするにはもったいないくらいよく出来た作品。製作陣がくだらない作品と投げやりにならずに、そこに何が描けるのかを真剣に考えて作られている印象。信じてもらえないかもしれないが、おふざけ要素よりシリアスな要素の方が多い作品なのだ。

この映画の面白さはやはり三池監督らしさにある。激しい暴力描写に下らない下ネタ、そして根底にある復讐モノとしての堅実な作り。海岸でのヒロインとのやり取りや元兄弟分との会話は、監督のロマンチストな一面が見られる。だが、そこに加えて特撮モノを意識した作りが、この映画を更にユニークなものにしている。

アクションも含めヤクザ映画というよりダークヒーローの側面が強く、改造された自分への恐怖やアイデンティティの崩壊などもテーマの一つになっている。仮面ライダーの漫画版や初期のテレビ版を想起させる、大人向きの特撮モノとしてしっかりとした作り。

前半はふざけている部分も多いが、後半からはシリアスな場面が多く、なんなら笑える要素はほぼない。ヒロインの末路や元兄弟分との対決、改造された主人公が「俺人間だよね!?」と泣き叫ぶシーンなど。クライマックスは観ていて胸が痛くなるシーンの連続だ。でもって、ラストのずっこけたくなるような下らなさ。これも三池監督らしくあるのかな。

『極道戦国志 不動』みたいなぶっ飛んだ作品を期待してたら、まさかの割と真剣でダークな復讐モノという。サイボーグになったヤクザという「ふざけてくださいね」と言わんばかりの設定で、なぜこんな作品が生まれるのか。つくづく三池監督は不思議な映画監督であると思わされる。だからこそ彼の作品はやめられないのだ。
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