天候不良のため目的地とは異なる地方空港に降り立った家族に起こるトラブルが、やがて空港全体を巻き込んだ騒動に発展していく様子を描いた物語。この作品のワンカット撮影は舞台と映画の良い部分を融合したものになっていて、何かが起こるという展開は一切ないが、飽きることはなかった。空港内で登場人物が動き回りながら会話するだけの物語ながら家族の温かみやそれぞれが直面する悩みなどを上手く描いていたように感じた。カメラワークが全編登場人物たちの視点の高さと同じであることから、実際にその場にいるような感覚を味わえる。ただ盤面ごとに覇気が感じられないから登場人物の心情があまり濃く見えなかった。しかしその分だらだら感が強まってるように感じ、作品として見やすいゆるさが醸し出されていた。このようにコメディタッチで描いた物語だから登場人物が抱えるシリアスな悩みも可愛らしく見えた。
家族のようなどれだけ近い存在でも言うことのできない秘密を人間は持つ。むしろ家族に抱える秘密は家族以外に知られても良いが、家族にだけは知られたくないものがほとんどだと思う。そんな秘密を家族一人一人が家族以外の人物（＝主人公）に吐き出していく様はシュールであると同時に、他人から信頼されるほどの人柄の良さを持つ主人公に好感を抱いた。しかし隠した秘密はありきたりで膨らませ方に想像のつくものばかりだったのが少し残念だった。
