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フランシス・ハのEDDIEのレビュー・感想・評価

フランシス・ハ(2012年製作の映画)
4.4
27歳フランシス走る。アラサー彼女のダメっぷりと歩む道筋を微笑ましくも共感してしまう。人生の一つの転換期で主人公が踠く姿に他人事だとは思えぬ人は響くはず。全編モノクロの映像がニューヨークやパリを疾走するフランシスを彩る。

なんとも不可思議なタイトル『フランシス・ハ』。その意味はラストに明かされるわけですが、主人公フランシスの性格を如実に表していて凄くすーっと心に溶け込んでいく模様が気持ちいいです。
『マリッジストーリー』のノア・バームバックが監督と脚本を手掛けるこちら。主演のグレタ・ガーウィグが共同で脚本を担当しており、27歳のありふれた女性像がわかりやすくも表現されています。

27歳といえば大人になって最初の転換期みたいなもの。本作ではフランシスと同居していた親友が突然彼と住むと出ていき、しかも彼の仕事の都合で日本へ。
そんなフランシスも付き合っていた彼と別れ、夢のダンサーとして道半ばで人生に行き詰まるわけですね。それから住む家もなく転々としていきます。
夢を諦めきれず、しかも自分中心で空気が読めないフランシス。だけど、なんだか愛着が湧いちゃうキャラクターなんですね。

舞台はニューヨーク、サクラメント、パリと場面を移します。
世間的には憧れのニューヨークやパリも決して明るい部分まで見せず、仕事もままならないフランシスにとっては背伸びをしているようなもの。
27歳という年齢でダンサーという夢にしがみつき、自分を曲げない信念は見上げたものですが、ちょっと痛々しい。だけど、そんな彼女を否定もできず、ちょっと理解できてしまう自分がいます。むしろ夢に突き進む彼女の姿に羨ましさすら感じるほど。

この作品は「夢は諦めなければ必ず叶う」みたいな成功物語ではありません。だけど、フランシス自身が転々とする中で、今の境遇に向き合う同世代の友人たちと接することで、かけがえのない友人ソフィの大切さにも気付いていくわけです。

大人になっていい年齢になると、仲の良い友人ともそんなに頻繁に会えなくなったりもします。
本作はいかに自分と向き合い、今を見つめ直し、大切な人に自分の心のうちをさらけ出す重要性に気付かせてくれます。
主演のグレタ・ガーウィグがいい意味で超美人というわけでもなく、スレンダー美人でもなく、いわゆるよくいる人。それが作品に上手く作用しており、観ているこちら側も我ごとのように捉えることができます。フランシスの生き方に疑問を抱きながらも、等身大で生きる彼女を羨ましくも思うのに共感を覚えるのかもしれません。

エンディングで流れるデビッド・ボウイの“Modern Love”が作品の雰囲気と合致しており、最高の締めくくりも味わえます。

※2020年自宅鑑賞199本目
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