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猿の惑星:新世紀(ライジング)のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 アメリカ・サンフランシスコ、TVから流れるウィルス蔓延のニュース、ジェネシス社研究員ロバート・フランクリン(タイラー・ラビーン)から始まった恐るべき感染症。猿にとっては言語能力を与えるほど知能を向上させる新薬に見えた「ALZ-113」だったが、実は人間にとっては危険な殺人ウイルスだった。ジェネシス社の研究所から漏洩した「ALZ-113」は、のちに猿インフルエンザと呼ばれる致死率の高い新型感染症として、世界中へと爆発的感染を拡げていった。猿インフルエンザの抗体が出来た一部の人間を除いて多くの人間が死亡したため、全世界規模での「文明社会の崩壊」が起きつつあった。チンパンジーのシーザー(アンディ・サーキス)が仲間とともに人類に反旗を翻し、ミュアウッヅの森に逃げ込んでから10年、彼が定めた「エイプ(猿)はエイプを殺さない」という掟の下、互いに助け合う平和な日々を送っていた。そんなある日、ミュアウッヅの森に武装した人間が侵入し、カーヴァー(カーク・アセヴェド)がシーザーの息子アッシュ(ドック・ショウ)に誤って怪我を負わせてしまう。マルコム(ジェイソン・クラーク)たちサンフランシスコの生存者は、猿の集落内にある水力発電施設を動かさなければ発電量が足らない。見かねたマルコムはシーザーに対し、実力行使に打って出る。

 『PLANET OF THE APES/猿の惑星』以来10年ぶりとなる『猿の惑星』リブート・シリーズ第二弾。なぜ人類の文明は滅び、猿が支配者となったのかを明らかにする新シリーズは、68年のオリジナル『猿の惑星』を踏襲した人間 vs 猿の下克上の物語に他ならない。ウィルス蔓延により、生命の危機に瀕した人類はシーザーたち猿に助けを求める。猿側のシーザーの妻コーネリア(ジュディ・グリア)は次男を生みながら、一転して生命の危機に瀕していた。一方人間側のマルコムもカーヴァーのミスにより、息子アレキサンダー(コディ・スミット=マクフィー)のバッグを失う。人間側vs猿側、互いに背に腹は変えられぬ状況は融和をもたらすかに見えるが、幼い頃にジェネシス社の実験台になったコバ(トビー・ケベル)だけは人間への不信感が拭えずにいた。互いに戦争をしたくない人間側vs猿側の思惑は、コバとドレイファス(ゲイリー・オールドマン)と言う凶悪な異分子のおかげで、互いを認め合う思いやりの気持ちが無力化する。今作の人間vs猿の争いは独裁者の誕生により危機に瀕し、他者を思いやる心は政治に翻弄される。不寛容な現代社会の核心を突くような物語は、同時になぜ隣人同士が争わなけれなならないのかを我々観客に問う。新シリーズ2作目はポピュリズムの時代と不寛容とを下敷きにしながら、それでも連帯の必要性という理想像にシーザーもマルコムも大志を夢想する。だがその結末の残酷さが来たるべき3作目を照らしている。
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