ゆん

アダム・チャップリンのゆんのレビュー・感想・評価

アダム・チャップリン(2011年製作の映画)
5.0
溢れ出る血糊に、こちらまで汚され傷付いたような痛々しさと、心が洗われるような清々しさを感じられる、北斗の拳系映画界の最高傑作。

まるで80年代のスプラッタームービーを観ているようなアナログ味にこだわりながら、小気味良くゲーム感のあるCGエフェクトを多用し特殊メイクの力を最大限にまで引き上げている。
人間が前後や左右真っ二つに切り落とされたり、腕を切り落とされたりというショッキングなゴア描写が常に行われている本作だが、観ていて不思議な安心感に包まれる。人物描写、仕草や戦闘時の動き、カット割りなどが徹底して、私達が長年慣れ親しんできた漫画の世界そのものを忠実に再現しているからだ。どこかで観たことのある表現を積み重ねていくことで、結果的に全く観たことの無い独創的な映像体験をさせてくれる。

主人公はケンシロウのようでもあり、終始白眼で主演監督もこなす座頭市のようでもある。愛する女性を失い復讐に燃えるも、自身の凶暴性に恐怖している。無慈悲で異形の悪者もまた、過去のトラウマに怯え、登場人物全員の中に強い恐怖がある。そしてそれを煽るように、暗闇を多用した静かな歩調で物語が進む。
ゴア描写以外も、実に丁寧な作りだ。マニア向けのパロディで茶化したり、斜に構えて照れ隠しするような甘えた姿勢は一切ない。ただ硬派に、彼らに出来ることの限りを見せつけてくる。
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