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チョコレートドーナツのEDDIEのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.6
心にぽっかり穴が…血縁になくとも全身全霊で愛情を尽くすカップルと司法の無残な仕打ち。実話だからこそ、時代が違えば彼らはもっと幸せになれたのでは…と悔しさが滲み出る。間違いなく傑作!

きっと自分好みだと信じて疑わなかった作品ですが、なぜだか後回しにしてしまっていました。なんとなく重そうな雰囲気だったので、心に余裕がないときに観るのはやめようと考えていたのです。
結果的には確かにテーマ的には重いんですが、それを上回るほどの温かみを感じる作品で、もっと早く観れば良かったと思ったほど。
ちょうど今渋谷のホワイトシネクイントで上映されている模様。まぁ配信で鑑賞したんですが。

本作のメインパーソンは3名。
ショーパブでパフォーマーとして日銭を稼ぐゲイのルディ・ドナテロ。歌手になることを夢見ています。役者はアラン・カミング。舞台『キャバレー』でトニー賞を受賞した実力者で、ゲイの役も多いので本作の演技の説得力がハンパないです。
2人目は検察官のポール・フラガー。ルディと交際しますが、彼は過去に未練ある問題を抱えています。役者はディラン・ギャラハントで、『ノーカントリー』やドラマ『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』あたりが印象的です。映画、ドラマと幅広く活躍していますね。
3人目が本作のキーパーソンとなるダウン症の少年マルコ。役者はアイザック・レイヴァで、高校の時には知的障害者の自立・社会参加のための大会「スペシャルオリンピック」に参加した背景があります。

マルコは母親に育児放棄され、ルディとポールと家族同然の生活を送ることになります。
もうこの3人の生活の模様がとてもいいんですよ。マルコの養育権をかけて後に裁判にも発展するんですが、観る側からするとこの3人が一緒に暮らすのがとても幸せそうでこのままでいいじゃないかと思わせられるんですよね。
ただ、現実は無情。ルディは家賃すら滞納するぐらい生活苦、それをサポートしようとするポールは検察官という社会的地位も高いにも関わらず、ゲイ同士のカップルというのが1970年代のアメリカにおいては立場的にかなり厳しい目にさらされてしまうのです。

ポスタービジュアルにもなっているルディがマルコの肩を抱くシーン。もうここは涙なしには見られません。

実話とはいえ、着想を得た話なので、ゲイカップルでダウン症の子を育てたという話には脚色がなされているようです。
ですが、1970年代にゲイの男性が血も繋がらぬ子を育てることは想像以上に大変だったんじゃないかと思います。

今年公開された草彅剛主演の『ミッドナイトスワン』は本作からも影響を受けているんだろうなと思わされました。
主人公のルディがショーパブで働いている点、決して裕福ではない点、他人の子供を育てる点など、酷似している部分が多いですね。

かなり辛い描写も多く、ダウン症のマルコが悲しみを抑えきれないシーンなんかもう居た堪れない気持ちになり、もっと幸せになってほしいと願ってしまうほど。
だけども、それ以上に彼ら3人のやり取りが温かくホッコリするシーンも多いです。

素晴らしい作品。人生において観ておいて損はないはず!

※2020年自宅鑑賞325本目
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