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イーダのodyssのレビュー・感想・評価

イーダ(2013年製作の映画)
3.5
【古風な手法が開かれた作品を生んだ】

モノクロ・スタンダードサイズという、最近では珍しい映画。

時代設定は1960年代。修道院で育てられた女の子が、血縁者のおばがいると突然知らされて、一度会ってくるように言われる。おばを訪ねた少女は、自分の実名を知り、実はユダヤ人であること、両親は大戦中に殺されたことを聞かされます。

舞台となるポーランドは、第二次大戦中はナチス・ドイツとソ連によって分割され、双方に蹂躙されました。また大戦中はナチスによるユダヤ人虐殺の主たる場所にもなりました。しかし、ユダヤ人虐殺はナチスだけの仕業だけでなく、ポーランド人もかなり協力したと言われています。そもそも、大戦前からポーランドには反ユダヤ主義の風潮が濃かった。

この映画はポーランドのそうした実情と、戦後共産化されたポーランドで生き抜いてきたおばの半生を、暗示的な手法、つまり何もかも洗いざらい描き出すのではなく、断片的なエピソードや言葉でそれとなく示す手法で作られています。

さらに、ずっと修道院暮らしだった少女は、おばと旅する過程で世俗的な文化や風俗から誘惑を受けるのです。
修道女の服に身を包んだ少女が、サックス吹きの青年と知り合い、自分の魅力を教えられて、フードを脱ぎ、髪を垂らした姿を鏡に写すシーンが、とても印象的です。

しかし、この映画はすべてを描き尽くすことはしません。色々あってラストシーンとなるのですが、そのラストシーンも受け取り方は観客それぞれでしょう。開かれた映画、と言えるのかも知れませんね。
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