マクガフィン

そこのみにて光輝くのマクガフィンのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.6
函館の夏を舞台に、社会の最底辺で向き合う男女の絶望と再生から生まれる愛や家族の形を描いていく物語。原作未読。

過去の罪悪感から生きる目的を見失い怠惰な日々を過ごす男(綾野剛)と、家庭内依存により社会の底辺で夢も希望もなく暮らす女(池脇千鶴)。そんな2人が絶望の淵でもがき苦しみながらも寄り添っていく。

男と女のお互いの孤独を慰め寄り添っていく佇まいは見事で、逃げたくても逃げないで、売春で家族を養う女に痛々しいまでの悲哀を感じる。

2人を繋ぐ女の弟(菅田将輝)がまた出色。頭は悪いが純粋無垢な若者を自転車の漕ぎ方だけで描写することは素晴らしく、闇に秘めた悲しみや怒りを全身から迸らせる。

この3人の醸し出す演技が相乗することで生きる残酷さが胸に重く迫る。
閉塞的な地方都市で夢や希望とは無縁な人生を送る現在形の生々しさが痛々しい。

人生に意義を見出せず、喪失と孤独にさいなまれながらもひたすら命を繋ぐ。負の連鎖による出口の見えない世界においても僅かな希望を見い出して、そそがれる光は美しい。

負性は存在価値を持っている。世界は多様性なのだから。タイトルを連想する光と輝きのラストシーンは見事。

・2014年 邦画 作品賞:第1位
・2014年 最優秀主演男演賞:綾野剛「そこのみにて光輝く」
・2014年 優秀主演女演賞:池脇千鶴「そこのみにて光輝く」
・2014年 最優秀助演男演賞:菅田将輝「そこのみにて光輝く」