アメリカ西部の砂漠地帯。かつて白人によって奪われ、核実験が繰り返されたその土地は、今は無人の荒野がどこまでも広がる、この世の果てのような場所だ。ある夜、車が故障して立ち往生していたハリーとバフィーの夫婦は、小さな光に導かれるようにして一軒の小屋に辿り着く。そこにはネイティブ・アメリカンの血を引いた青年ボーイが暮らしていた。妻を亡くして以来、世界の終焉を待ち続けているボーイは、美しいバフィーを一目見て生きる本能を目覚めさせていき、バフィーもまたボーイの妖しく不思議な精神世界に惹かれていく。一方、俗世そのもののようなハリーはボーイと事ある毎に衝突する。灼熱の大地で、三人の関係は次第に緊迫の度を深めていき、やがて決着の時が訪れる——。
1992年、シンガポールで仲間たちと撮影した幻の傑作はなぜ持ち去られたのか。答えを求めるサンディ・タンは、空白の25年という時間をさかのぼりはじめる。
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