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7番房の奇跡のkuuのレビュー・感想・評価

7番房の奇跡(2013年製作の映画)
4.0
『7番房の奇跡』
原題:7번방의 선물.
英題Miracle in Cell No. 7.
映倫区分G。
製作年2013年。上映時間127分。

無実の罪で投獄された知的年齢6歳の父親と幼い娘に起きる奇跡のような物語を描き、韓国で大ヒットを記録したドラマ。
『王になった男』のリュ・スンリョンが、娘を愛する父親役を熱演。

もうすぐ小学校に入学する少女イェスンは、子どものように無邪気な父ヨングと2人で、貧しくも幸せな毎日を送っていた。
ところがある日、ヨングが女児を誘拐・殺害したとして逮捕されてしまう。ヨングが収監された7番房の仲間たちは、彼とイェスンを会わせるためにある計画を思いつくが。。。

時にドラマてのは、こんなことあり得ないやろ、ムリやろと考えても目的を達成する作品はある。
今作品は、このカテゴリーに入るとは思もうし、問題のある法制度を告発するための奇抜なモノか、知的障害者が受ける理不尽さをユーモラスな角度から描いたドラマかと云えば、ムチャ悲劇的な映画とは云えない。
それでも今作品は、個人的には非常にベタながら嵌まったし、映画作品としては巧くいってると思います。
特に、巧みなキャストのお陰で、脚本の問題を下に隠すことに成功している。(プロットは、全体を構成するパーツの中に、実際には合理性や現実性の合わないものがあるけど)
それに付き合うことを視聴者にかなり求めているのも否めない。
しかし、極度の不自然さにもかかわらず、この組み合わせは巧くいってる。
場面はすべて太陽の光であふれカラフルやけど、心の痛みを認めざるを得ない。
そして、いくつかのジョークは翻訳で失われてしまうかもしれませんが、状況に応じたユーモアも十分に伝わった。
今作品は主人公リュ・スンリョンが知的障害者を演じることは滑稽に見えてしまう可能性あるし、難しい役やと思うけど、それを見事にこなしてた。
また、彼の側にいるのが娘役のカル・ソウォンは、ある時は大人びすぎていて、ある時はあまりにもかわいく演技力には脱帽させられました。
また、今作品の強さは他の脇役たちの力量にもあると思う。
オ・ダルスは、同房者たちのリーダー的存在であり、登場人物たちをすぐに心の中に取り込み、時に風変わりな特徴があるにもかかわらず、楽しい時間を過ごさせてくれたし、ただ、法廷での枠組みを形成するストーリーの中で、厳格で時に木訥な弁護士を演じるパク・シネには、十分な説得力がないのが残念やった。
また、この映画は法廷ドラマではないし、この枠組みが本当に必要だったのかどうかも疑問やけど、その一方で、なぜか法廷ドラマになっている。
今作品が韓国の法制度を糾弾したいと思っているとは到底思えへんけど、それでも十分に反省させることが出来てるので、実はそれが狙いだったんちゃうんかと深読みは生まれます。
珍しく構成されたサウンドトラックを含む技術的なモンを除けば、今作品は操作されたお泪頂戴演出にもかかわらず、実際には説得力のある出来事に成功していると感じますし、知的障害のある父ちゃんと、父ちゃんを必要とする幼い娘、刑務所を舞台にした死刑宣告という材料を考えれば、何が起こるかは十分にわかっているはずなんやけど、それでも共感を覚える不思議な作品でした。 
小説の紙の上ではうまくいかなくても、スクリーン上では、韓国と云う土壌のユーモアとドラマに満ちた素晴らしいアップダウンの効いた体験をさせてくれる数少ない映画の一つです。


余談ながら、この場は映画作品の感想を書くアプリであり、※書くのは場にそぐわないかもしれませんし、また、今作品とは事情が大きく違いますが、今作品を見終わり、光市母子殺人事件の当時少年Fを思い出しました。 
以前、小生は少年Fが未決囚の時に広島拘置所で面談をしたことがある。
少年Fは、本作品とは違い凶悪な事件を犯し、許されることは難しいです。
世論も少年Fの存在すら忌み嫌った(当初小生も同じ様に事件をメディアから知り嫌った)。
確かに、罪を犯した者は罪に向き合い、罰をうけるのは当然だし、被害者の肉親の情としては極刑で償って欲しいと云うのは十二分にわかります。
しかし、当時少年に対して裁判所は死刑を云い渡すべきでなかったのではないかと思えます。
また、今後、他の少年が重大な事件を起こした場合に、大人と同じような形で、死刑を含めた形で責任を取る状況が加速していくということが危惧される。
そして、何よりも少年Fが今作品の様に知的障害をもっていたことは、メディア報道ではあまりなかった。
小生は彼と面談を通して知的障害を持ってるのは一目瞭然でしたし、その事を裁判所が判決に鑑みてはなく死刑判決を下したのではないか、
また、捜査の段階で今作品の様に彼の知的障害を逆手に取った検察側の有利な調書などあったのではないかと疑ってしまいます。
全く公平な裁判は難しいとしても片寄りの少ない捜査と起訴、そして裁判がいつの日にか行われる事を切に望みますし、死刑を廃止しろとまでは思いませんが、その公平性が確立出来うる日まで死刑執行は、韓国同様に日本国でも一時停止をし、議論して欲しいと云う思いは強く持ちました。
韓国では1997年12月30日を最後に死刑が執行されていない。死刑制度を廃止するかどうかに関し、法務部は『国の刑罰権の根本にかかわる重大な問題であり、さまざまな面を総合して慎重に検討していく』としている。
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