mimitakoyaki

自由と壁とヒップホップのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

自由と壁とヒップホップ(2008年製作の映画)
4.0
パレスチナ人によるアラビア語ラップが生み出す希望と、パレスチナの過酷な現状を映したドキュメンタリー作品です。

ヒップホップを通して見るパレスチナ。
パレスチナ人と一口に言っても、イスラエル領内のパレスチナ人地区に住んでる人達もいれば、イスラエル占領下のパレスチナ ガザ地区などに住んでる人達もいて、イスラエルのパレスチナ人は常に差別や抑圧の中で暮らし、ガザのパレスチナ人は高くそびえ立つ隔離壁に囲まれ、自分の国にいながら移動の自由もなく、イスラエルから激しい武力攻撃を受け、破壊された瓦礫の街で暮らす。

イスラエルに住もうがパレスチナに住もうが、どちらのパレスチナ人にも支配されることによるそれぞれの苦悩がある事を知りました。

居場所を奪われ、暴力によって迫害されてきた怒りをアラビア語でラップにすることで、自分の感情や意思が解き放たれ、それが多くの人の心に届き、人々に勇気と希望を与えていく。

自由も権利もなく常に逮捕や爆撃の恐怖にさらされるこの街では、子ども達は希望を持てずに、貧困から抜け出したくてヤクの売人になる事を夢見ているというから、本当に深い絶望の中に生きてるんだなと愕然するのですが、ヒップホップのグループが子ども達を訪ね、ラップを教えたり語ったりして、暴力ではなく音楽、芸術の力で抵抗する事を説いていくのが、とても共感したし素晴らしいと思いました。

彼らの放つ言葉とビートが鋭く心に突き刺さる。
パレスチナ人だからこそ刻める言葉がある。
抑圧された人々に寄り添い鼓舞する力がある。

パレスチナ人のアラビア語ラップをやった初めてのグループDAMに憧れて、別のヒップホップグループも誕生しだしています。
いつか、こうしたアートやカルチャーの力で当事者だけでなく幅広い多くの人たちを結びつけ、パレスチナの状況を変えていけたら良いのにと思います。

日本に住む私たちには遠い遠いパレスチナだけど、パレスチナが抱える問題を知り、音楽が人々に希望を与えてる事を知れて、とても有意義でした。
たくさんの人にこの作品を見て知ってもらいたいです。

35
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