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エレニの帰郷のleylaのレビュー・感想・評価

エレニの帰郷(2008年製作の映画)
3.8
「エレニの旅」に引き続き鑑賞。20世紀3部作の2部作目にして、アンゲロプロスの遺作。
特典映像に奥さんと娘さんのインタビューが入っていて、アンゲロプロスの不在が悲しい。

ギリシャ難民として時代に翻弄されたエレニ(イレーヌ・ジャコブ)と恋人スピロス(ミシェル・ピコリ)の再会、そしてエレナを愛し支え続けたヤコブ(ブルーノ・ガンツ)、3人の半世紀にわたる愛と半生。

そして、エレニの息子(ウィレム・デフォー)とその娘エレナ。

この2つの物語が、過去と現代を交錯しながら描かれます。

昔も現代も、全く形は違うけれど困難は多々あり、生き抜くことの難しさ、行き場のなさ、孤独の悲しさは共通なのだと思わせる。

若い頃のエレニが雪の中を走るシーンと、孫のエレニと祖父のスピロスが雪の中を走るシーンの対比で、時間は脈々と続いているのだと感じさせます。

時の埃(原題)は、過去から現在へと巡りめぐって積み重なっていく。そんな監督の未来へのメッセージを感じるのは、遺作だからかもしれない。

いちばん心に残ったのは、ヤコブのエレニへの結ばれることのない愛でした。ヤコブ役のブルーノ・ガンツの「ベルリン・天使の詩」を彷彿させるシーンが感慨深かった。

エレニの半生を描くには足早に追いすぎた感があり、孫のエレニの精神的に追い詰められている様子も描写が薄い。いつもの芸術性の高い長回しは少なめで物足りなかった。有名俳優を多く使っていることや英語だったこともしっくりこなかった理由かな。

とはいえ、いいシーンもたくさんあります。いかんせん前作「エレニの旅」が良すぎたのです。
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