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少女は自転車にのってのTSのレビュー・感想・評価

少女は自転車にのって(2012年製作の映画)
3.4
【サウジアラビア初の長編映画】74点
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監督:ハイファ・アル=マンスール
製作国:サウジアラビア
ジャンル:ドラマ
収録時間:97分
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正直なところ内容自体はそこまで感動できるものではありません。しかしながら、後にサウジアラビアの背景を調べることにより、今作の素晴らしさ、存在意義がわかる作品であります。

自転車が欲しい少女、ワジダは何とかそれを購入しようとしてお金を貯めるが到底貯まらない。そんな中、学校でクルアーン暗唱大会があり、賞金を得るため参加するのだが。。

ここで余談ですが、最近ではコーランはクルアーン、マホメットはムハンマドと呼ばれる理由を述べておきます。これはアラビア語にはa.i.uの三つの母音しかなく、コーラン、マホメットは原語に忠実ではないということから近年では改良されているのです。
例えばクルアーンのアラビア語の綴りはقرانであり、最初のقとرでコと発音するには無理があるのです。

ともあれ、自転車を入手すべく、クルアーンを暗唱する少女の話でして、映画自体の内容よりも、この国の背景の方で考えさせられてしまいます。サウジアラビアは戒律の厳しい国でして、女性の社会進出をほとんど認めない国であります。一見、極端な差別と捉えられそうですが、僕たちにはわからない概念がクルアーンだけでなくハディースなどでも存在するのでしょう。また、偶像崇拝禁止も徹底していて、映画、アニメなども人を映すということで厳しく検閲されるそうです。また、例えば我々が観光を理由にサウジアラビアに行こうとしても弾き返されてしまうでしょう。もっとも、サウジアラビアにはメッカやメディナがあり、ムスリムからすると絶対に訪れたい聖地であるため厳しくも入りやすいとは思いますが。。
また、音楽を聴くことも許されませんし、女性は表を歩く時には全身を黒い布で覆わなければなりません。よく見る、全身黒づくめで目しか見えない女性はサウジアラビアの女性ということが窺えます。女性には人権がなく、たとえ父親に殺されても裁かれないという異常ぶり。こんな国で果たして女性は幸せなのかよ?と問いただしたくなるのですが、そんな中で今作が出来たことは非常に意義のあることだと思われます。さらに今作の監督が女性であることも極めて象徴的なことであります。実は、今作がサウジアラビアにおける初の長編映画だそうな。サウジアラビアにおける女性の社会進出を促した画期的な一本と言えそうです。しかしながら、今作は肝心のサウジアラビアでは上映されていません。サウジアラビアよ。。このままで良いのか? 自国の戒律に囚われる鎖国状態にしか見えないのが自分の意見です。

しかしながら、内容に関してはそこまで感動はせず、主人公が極めて貧困であるという状態でもなかったのである意味安心感がありました。この安心感が恐らくやや平凡というイメージを与えているのでしょう。先述した通り、背景を調べることにより飛躍的に評価が上がる作品だと思います。
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