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鑑定士と顔のない依頼人のYYamadaのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
3.9
名作コンビ【トルナトーレとモリコーネ】

〈見処〉予備知識なく直ぐに鑑賞を!
①名作コンビ再び
・『ニュー・シネマ・パラダイス』ジュゼッペ・トルナトーレの監督・脚本によるイタリア発の恋愛ミステリー。
・トルナトーレと作曲家エンニオ・モリコーネのコンビ活動の「末期」に該当。
・本作の舞台はイタリアとチェコであるが、世界配給を意識しオーストラリア人のジェフリー・ラッシュ、カナダ人のドナルド・サザーランドの大物俳優2名を配し、英語にて製作。
・英題『The Best Offer』は美術オークションの「最高値」の意味とともに、ラッシュ演じる美術鑑定士ヴァージルの「人生の最高の価値」を示している。
・本年7月に他界したモリコーネによる作曲は本作では控え目の印象。
・美術品やヴィラ、オークション会場、ヨーロッパの街並みの色彩が非常に美しい作品である。

②伏線さえ見付けられない
・初老の美術鑑定士ヴァージルにある日、面識のない若き女性クレアから入電。
・他界した両親の保有美術品の競売依頼を受けたが、常にクレアは姿を表さずヴァージルとクレアの2人の関係がどのように進展していくのか、想像がつかない。
・「予備知識なく鑑賞を!」と云われてしまうと妄想激しく疑心暗鬼のまま鑑賞することになるが、そもそも本作は「コメディ」「恋愛」「ファンタジー」「サスペンス」「夢落ち」なのか、着地点さえも想像がつかない。
・鑑賞を終えてみて本作の結末は想定の範囲内でありながら、どこが「伏線」となっていたのか全くわからずエンドロールを迎えたことに驚く。
・鑑賞後に解説サイトを見ると小さな伏線が多々あることが判るのだが、フィンチャーやノーランに代表する「どんでん返し」の名手による「叙事」の伏線配置に対して、本作のトルナトーレ監督は「叙情」を伏線としている点で他作品にはない刺激を受けた。
・本当に解説サイトにあるような伏線をトルナトーレ監督が意図的に配置しているのか?

③ハッピーエンドと云える!?
・トルナトーレ監督は本作を「ハッピーエンド」と表現している。
・作中の大部分は善人が集う映画でありながら、終盤のどんでん返しには悲哀さえも感じるものである。
・監督の云わんとしていることは、誰も誕生日を祝ってくれない冒頭のレストランの場面から、ラストシーンで僅かな希望を待つようになった変化が小さな幸せと表現したいのだろう。

④総括すると…
・本作は「どんでん返し」系の所謂「サスペンス」にありながら、本作の醍醐味は心の遷移にあると感じ「浅そうで深い」作品だと思う。

※本作はフォロワーのmaroonさんにご紹介いただきました。考える切っ掛けと、自身のレビュー500本目に向けた流れを作ることが出来た作品でした。
maroonさん、いつもありがとうございます!
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