かたゆき

鑑定士と顔のない依頼人のかたゆきのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
2.0
優秀な美術鑑定士であるヴァージル・オールドマンは、極度の潔癖症と偏屈な性格のせいで何十年もの間、ずっと独りで過ごしてきた孤独な男。
ある日、彼は両親の遺産を処分したいので鑑定してほしいという若い女性の依頼を受けるのだった。
古びた館へと足を踏み入れたオールドマンは、クレアと名乗るその依頼人に会おうとするものの、彼女は一向に姿を現さない。
彼女のそんな無礼な態度に次第に苛立ちを募らせるオールドマンだったが、館の壁の向こうから突然クレアが声を掛けてくるのだった。
「はじめまして、オールドマンさん。信じてもらえないかもしれないけれど、実は私、人と会うのが怖いの。15歳のころからこの館の外へと出たことがない。それだけじゃないわ、館に誰か人が居る時は、私はこの隠し部屋に閉じこもるの。しっかりと鍵を掛けて……。両親が居る時だってそうだった。だから私、両親ともずっと会わずに過ごしてきた。そう、壁のこちら側にある秘密の部屋で、私は12年もの間ずっと独りで生きてきたの」――。
絶対に人前に姿を見せないそんな謎めいた彼女に、これまで一切女性と交際したことのないオールドマンの心は少しずつ掻き乱されてゆく……。
孤独な初老男性と壁の向こうに隠れ住むミステリアスな女性との恋を妖艶に描き出すダーク・ラブ・ストーリー。

正直に告白すると、実は何年も前に、この監督の代表作にして名作の誉れ高い『ニュー・シネマ・パラダイス』を観たのですが、僕の感性とはまったく合わないのか、何処が良くて何に感動していいのやらさっぱり分かりませんでした。
「これの何処が傑作なの?」という疑問だけが心に残ったまま、以来この監督の作品はずっと避けてきたのですが、本作の世間での評判がすこぶる良かったので、「もしかしたら…」と今回鑑賞。

結果は…、やっっっぱり僕の感性とは全く合わなかったです(笑)。
どうしてこんなにも魅力的な設定を扱ってるのに、ここまで凡庸なつくりにしてしまったのでしょう。
これをもし、P・アルモドバル監督やR・ポランスキー監督が手がけたならきっと淫靡で怪しげな魅力に満ちた良作になっただろうに。
だって“顔のない依頼人”とか言いながら(まあ配給会社が勝手に付けた邦題ですけど)、中盤でその肝心のクレアちゃんが早々に顔を見せちゃってますやん。
これじゃ物語の核となるべき、彼女の妖艶さや神秘性なんて欠片もありゃしませんって。

それからは、それ程綺麗じゃない彼女(失礼!)と偏屈じいさんとのどうでもいい恋愛論が延々と繰り広げられて、正直僕は退屈で退屈で仕方なかったです。
最後のオチも容易に読めてしまう凡庸なもので、別段心に突き刺さるわけでもなく…。
まあ、僕のような人間は世間では少数派なのかもしれませんが、この監督の作品はやっぱり自分とは合わないと十数年ぶりに再確認した次第であります、はい。
かたゆき

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