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シャンボンの背中のKientopp552のレビュー・感想・評価

シャンボンの背中(2009年製作の映画)
3.0
 「直球、ストライク!」、この映画の、内容ではなく、ある「恋」の顛末を語る、その語り口を一言で綴るなら、こう言えるかもしれない。本作は、男の感情の動きを男の視線でエゴイスティックに描いているからである。なるほど、本作では、男性監督が、女性脚本家の助けを借りながらではあるが、自身で脚本を書いているのである。そして、本作の「味噌」は、中年男性の子持ちのピッチャーに、振りかぶるまでに随分時間を掛けさせ、自分に自信のない、未婚の若い代理女性教員には、直球を受けるためのミットを手に中々はめさせなかったというところであろうか。

 ところで、本作の原題は、「Madmoiselle Chambon」という。邦題は、『シャンボンの背中』としてあるが、蓋し、これは、天才的命名である。なぜなら、いかに既婚で子持ちのJeanジャンが、Madmoiselle Chambonに恋し始めたかの契機を一言で言い当てているからである。同じくフランス映画で『クレールの膝』(エリック・ロメール監督、1970年作)という作品がある。ある中年男性が若いクレールの膝を見て、彼女に恋するストーリーで、『シャンボンの背中』と名付けた日本の配給会社の担当員は、中々の映画通である。筆者としては、惜しむらくは、Chambonは、苗字であり、Madmoiselle Chambonの名前Véroniqueヴェロニクを使って、『ヴェロニクの背中』としたいところではあるが。
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