大野

銀の匙 Silver Spoonの大野のレビュー・感想・評価

銀の匙 Silver Spoon(2013年製作の映画)
3.0
原作ファンなので予想はしていましたが、
やはり残念作でした、、。
1000%漫画で楽しんだ方が良い。

原作を知っている身からすると、
脚本が明らかに改悪されており、
内容がもうペラっペラ…!!

キャストもひどいもので、
再現度が低いのもさることながら、
演技が…

(富士先生に至っては、
 圧なさすぎて、
 家にあるものでコスプレした人かよと…)

あ、タマコ役の安田さんだけは、
再現も演技も素晴らしかったです。

ここからはネタバレ込みで↓。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

原作は漫画の「銀の匙」、
原作者はご存知の方も多いでしょう。

「鋼の錬金術師」の荒川弘大先生です。

原作では、
作者自身が農業高校出身者ということもあり、
農業にまつわるリアリティ高めなネタが多く、

また、
一般人代表の、八軒視点での経験を通して、
深く考えさせられる作品となっています。

しかし、
今作はやはり商業映画といいますか、

メインはキャスト!農業はオマケ!
オプションで、
友情、恋愛、スポ根!って感じ。

駒場の離農エピソードとか、
本来めっちゃ重いとこなのに、

今作ではサクッと乗り越えちゃって、
え、終わり?ですよ。

そもそも、仲良くなっていったり、
農業に馴染む(毒される)のに苦労するといった、
あるべき過程が、
綺麗さっぱりすっ飛ばされているので、

八軒が、
苦難しているように見えないんですよ。

はっきり言って、
ただの学生生活を観ただけです…。

だって原作だとアレですよ、
初っ端から、

「お前らは家畜のドレイだ!!」

って、教師にバッサリ言われて、
ひたすら使い倒されますからねww

机で勉強しかしてこなかった八軒からすると、
完全別世界な訳ですよw

八軒という人物は、
そんな完全アウェーな環境にも関わらず、
過去の勉学で染みついた真面目さで、
周囲にどうにか喰らい着いていき、

納得したくない現実と出会う度、
なんとかできないかと、もがき続け、
何かしらの答えを見つけようとしたり、

困ってるやつがいたら、
自身が倒れるまで動いたりもする様な、

とかく考えることを諦めない、
粘りまくる主人公なんですよ。

だからこそ、
周りに受け入れられていったり、
仲間が増えていったりした訳で、

大変な農業高校生活の中から、
多くの大事なことを知っていく過程があり、
そこがこの作品の美味しいところな訳で。。

御影との距離感だって、
あんな単純に近くなるものじゃないんですよ。

片思いしながら、
少しずつ信用を積み重ねて、
仲良くなれたのでは?と思えた矢先に、

「八軒君には関係ないこと」

って言われるからこそ、
あのシーンに色々ある訳で、、。


原作との大きな違いを列挙すると、

・駒場の球児としてのエピソードがない
・獣医志望の相川、デキるオタク西川が存在しない
・兄貴もいないし、父親がチョロい
・南九条あやめが、
 愛されバカからただの失礼女に
・副ぶちょー(犬)がしれっといる
・駒場と喧嘩して謝るのが、
 農家について知ってからではなく、
 離農してからに
・タマコが夏休み明けにスリム化しない
・牛の直腸検査実習が、模型ではなく生体
・“逃げることは悪くない“ 辺りのシーンが、
 校長からではなく顧問からに
・馬術部の面々が、名前以外何もかも違う
 特に大川先輩
・レース場作りを手伝ってくれる理由が、
 ピザからベーコンに
・ソリのデザイナーが西川から栄に
・プロレスマスクというオリジナルネタ
・「夢が無いのは何にでもなれる」という、
 オリジナルの安っぽいまとめ方

辺りでしょうか。

他にも細かな違いは沢山ありましたが、
書き始めるとキリがないので割愛。

いくつかの大きな違いは、
漫画を読む人の為に、記載しないでおきます。


総評としては、
原作を読んでほしい!ですね。

今作の100倍良い体験になると思います。

僕の好きな漫画、
トップ10にも入る作品ですので。ぜひ◎


そういえば、
あと一つ思ったことがありました。

序盤、
校長役が上島竜兵さんだと分かった時、

「生きるための逃げは有りです」

あのセリフが来ると察し、
うわぁー、、ってなりました。

結局は、まさかの顧問からだったので、
杞憂というか、なんというかですが。


生きるための逃げは有りです、
逃げまくりましょう◎

僕らは有難いことに、
経済動物ではないのですから。


ではでは小ネタのコーナーへ✌︎('ω'✌︎ )
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

監督が、「空白」と同じ方という驚き。
今作が2014年なので、
空白の方が後ですが。(2021年)


撮影がカットになる度に、
馬におやつをあげていたそうなのですが、

“カメラの邪魔をするとおやつを貰える!“

と、馬が覚えてしまったことがあったそうで、
何度もやり直しをさせられていたとか。笑


撮影時間を、
生体のスケジュールに合わせる必要があったため、
準備が明け方からになる等、
それなりにシビアだった模様。


駒場離農シーンに関して。

荒川先生の方から、
上がってきた脚本を見て、
「もっとあっけらかんとしてて良いです」
というリクエストがあったとのこと。

農業の現場にいた人間が外から見ると、
より悲惨に見えて、
傷口に触れるような感じになりそうだと感じ、
変更をリクエストしたそうな。


豚の解体シーン(電気ショックなど)は、
実際の映像で、役者たちの反応も、
その場での素の反応らしい。


学校でのレース場は、
生徒役の人たちが、
実際にワイワイしながら作ったとのこと。

良いっすなぁ、楽しそう。笑
大野

大野