空海花

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴの空海花のレビュー・感想・評価

3.8
アメリカ・インディーズ映画界の巨匠ジム・ジャームッシュ監督が手掛けたヴァンパイア映画。
何世紀もの間生きながらえてきたヴァンパイアの恋人たちの退廃的な生活を、現代社会に対するアンチテーゼとして描く。

ミシガン州デトロイト。
寂れたアパートでひっそり暮らすアダム(トム・ヒドルストン)は、何世紀も生き続ける吸血鬼。
今ではその正体を隠し、アンダーグラウンド・シーンでカリスマ的な人気を誇る伝説のミュージシャンとして活動していた。
起きて行動するのは夜間だけ。
必要な物の多くはイアン(アントン・イェルチン)という男に調達を依頼。
血液は、素顔を隠して医師ワトソンの病院を訪れ、お金を払って入手。
恋人はモロッコ・タンジールに居る、やはり吸血鬼のイヴ(ティルダ・スウィントン)
久々に再会した2人は、アダムのアパートで愛を交わし、音楽や人間たちの犯した歴史上の蛮行について語り合う。
モータウンやスタックス派。
俯瞰でぐるぐる回るオープニングはレコードプレーヤーのよう。
バスキアの画集が。
ホラー味はなく吸血鬼までオフビート感覚になるのが楽しい。
二人の異界の住人姿が妙に似合い、美しい。
時を超えた気だるい恋愛。

かつて栄えた場所への夜の散歩。
パッカード工場跡の廃墟、ジャック・ホワイトの生家、元ミシガン劇場の跡地。
16世紀に死んだとされる異端の作家クリストファー・マーロウ(ジョン・ハート)の名前が会話に上がる。

ロサンゼルスからイヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が訪ねてきて、
永遠に続きそうな退廃ムードに波紋が生じる。
高貴な吸血鬼たちは滅びるしかないのか。
世界には汚れた血ばかり。


2022レビュー#10
2021鑑賞No.431
空海花

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