EDDIE

るろうに剣心 伝説の最期編のEDDIEのレビュー・感想・評価

4.2
抜刀斎に会えて良かったね。
四乃森蒼紫、積年の想いを胸に遂に緋村剣心と合間見える。2人の間に芽生えるのは果たして血飛沫か友情か、それとも愛か?

という話ではありませんが、前作で伊勢谷友介の完璧なまでの四乃森蒼紫が「抜刀斎はどこだ!?」とまくし立てるものだから、今回は無事会えてそれぞれの信念を刀に秘めて対決が実現しました。
2人の殺陣のシーンは本作でも特に見所の一つです。

一方で本作のテーマの本筋は暗躍する志々雄真実を止めるということにあります。
ラスボスはあくまで志々雄真実です。

前作京都大火編で逆刃刀真打を手にしながらも、薫を海に投げ込まれ、志々雄を成敗することなく剣心も海に身を投じてしまいました。
海に打ち上げられた剣心は、師匠・比古清十郎に拾われ、飛天御剣流奥義継承を求め修行を開始します。

「生きようとする意志は何よりも強い」
捨て身で死ぬ気で戦ったところで、自分のことを想い残されたものはどう感じるか。るろうに剣心は原作も大好きなのですが、やはり人生訓とも言える素晴らしい言葉を、映像を持って伝えてくれたことには感謝しかありません。

その新たな信念を武器に前回対戦では逆刃刀を折られてしまった志々雄真実の右腕・瀬田宗次郎と対決。
喜怒哀楽の楽以外の感情が欠落し、常に躊躇なく人を斬ってきた宗次郎は、剣心との対戦ではどうも調子が出ない。
ここでも「僕が間違っていたのか」それに対する剣心の答えが「戦いの勝ち負けで正しいかどうかが決まるのならば、誰も人間は間違わない」と。答えは自分で探すしかないのです。
本当に宗次郎を演じてくれたのが神木隆之介で良かった。彼にしか演じれないほどハマり役でした。彼の叫び、2度目の鑑賞でも心にグサッと刺さりました。

最終局面は志々雄との一騎打ち。とはいえ剣心1人ではどうにもならない。斎藤一、相楽左之助、四乃森蒼紫と次々に援護に現れますが、太刀打ちできません。
もはやどちらが善人で、どちらが悪役なのかわからないぐらい、側から見るとリンチにしか見えません。笑
左之助や蒼紫に対しては「誰だお前はー?」と連発。いきなり知らない奴に斬りかかられ殴りかかられるもんだから、精神的にも正気じゃいられません。原作ではこのシーンではすでに知り合っているものの、本作では確かに志々雄と左之助&蒼紫は出会っていません。
由美を盾に剣心に無限刃を突き刺す場面の再現もしてくれて、これは志々雄一派の信念を肌で感じることができるかなり貴重な場面です。由美も初めて戦いの中で志々雄の役に立ち、死をもって幸せを手に入れる。ここで原作通り方治のコメントがあれば完璧だったのですが、左之助のワンパンで気絶していました。

奥義・天翔龍閃で志々雄にとどめをさした一方で、確実に倒したのではなく志々雄は全身火傷の後遺症で15分以上闘っていられない性質から体が自然発火して朽ち果てるわけです。
しかし、原作では志々雄の圧倒的な強さに身の毛もよだつほどでしたが、本作では一応剣心が志々雄を追い詰め焼け死んだという結果に。描写は少し異なりますが、映画としては敵を討ったというエンディングに繋がり、もやもやは残らないのではないでしょうか。原作を読んでない方のことを考えると本作の終わり方でも納得できます。
けど、やはり志々雄のあの圧倒的な強さをもっと最後まで表現してほしかったなというのが原作ファンのワガママではあります。

とにかく政府に恨みを抱き、東京を火の海にする計画を仕組んだ志々雄という最恐の悪党を成敗したことから物語はうまく終結。素晴らしい実写作品でした。
大友啓史監督、本作を生み出してくれて本当にありがとう!

一方で不満がないといえば嘘になります。
やはり魅力的な敵キャラである十本刀の扱いの悪さですね。これは尺の都合上仕方ないとはいえ、安慈と左之助には2人の間に何の物語もないし、何よりもただの雑魚キャラに成り下がってしまった宇水の扱いですよ。ここは仕方ないと思いつつも、やはり原作ファンとして触れないわけにはいきませんね。

政府のくだす一つ一つの決断。これは漫画の描写を脚色しつつも大きく異なるわけではありません。だからこそ、政治の在り方について考えさせられますよね。伊藤博文の「これが政治だ!」のセリフ。剣心に対して志々雄を討伐してほしいと願う一方で、その後は剣心を指名手配するという右往左往ぶり。結果的には戦略があったわけですが、人ごとには感じられないリアルな描写でした。左之助がかけたセリフも何の気なしに言ってる言葉のようでしたが、かなり重いひと言ですよね。

るろうに剣心という作品。漫画原作も映画でも我々には多くのことを教えてくれ、気づかせてくれます。今度も語り継がれてほしい傑作です。
発表された2020年公開の最終章。楽しみで仕方ありません。
EDDIE

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