クリプトン星人

トランス・ワールドのクリプトン星人のレビュー・感想・評価

トランス・ワールド(2011年製作の映画)
4.5
愛されずに産まれてくるくらいなら消えてしまったほうが幸せだよね。
不幸の連鎖を止めるのは自己犠牲ではなく愛であってほしかった。

相手の気持を推し量れない人は不幸の連鎖に加担することになる。
宗教の違いとか、素行の悪さとか、価値観の違いをもっと許容できたらね。

それはそれとして4人の関係がすこぶるエモかった。
本来、見ることも触れることもできなかった相手を抱きかかえていたり、あのとんでも空間をしっかりヒューマンドラマに落とし込めていて良かった。

前半のミスリードも相まって、最後は切なすぎて自省した。
結局、愛が全てなんだと思わずにはいられなかった。


※以下考察ネタバレ




宗教によって不幸が始まり、最期は神父殺しと自殺により地獄行き。
「いいんだ」というセリフは反出生主義を示唆。
自己犠牲によって罪を償われたかと思いきや、ループする2度目のコンビニ強盗は再び同じ男。
犯罪者の間に産まれ無限ループしており、死ぬはずだった人たちを救い続けている。
仮に彼が産まれなかったとしても別の人間に置き換わるだけなので不幸の連鎖は止まらない。
不幸の連鎖を止めるのは視聴者である私たち。

反宗教映画を神の舞台で行うという皮肉。
冷静に見てみると監督には当て馬、神には玩具にされているトムが哀れすぎる。