チッコーネ

君といつまでものチッコーネのレビュー・感想・評価

君といつまでも(1995年製作の映画)
2.7
ミレニアム前後のクラブで「薬を混入させた酒を飲ませ、女をかどわす」という事件は、少なからずあった(当時の私の知人は、同様の被害に遭っている)。
しかし本作、ハードなサスペンスというわけではない。
ひと一人の監禁にあたり生じる煩雑な事柄についての描写はなし、登場人物たちも激情に駆られることなく、淡々と状況に対峙していく。
さらに終盤には「すべて幻想譚」と匂わせる場面まで挿入されていた。

「求められて当たり前」と考え、何事にも受動的な本作のヒロインは個人的に嫌いだが、終盤に彼女の口から語られる「私はここに居続ける」という台詞は、よく聞くとかなり悲惨。
ピンクを含め豊富なキャリアを持つ監督は、無条件の女性礼賛作品を撮ろうとしていたわけでもないようだ。

入居社のないオフィスビルの1フロアなど、無機質なロケーションで撮影された場面が目立つ作品。
しかし必要以上に粋がる、白けるといった態度は感じられない。
真新しいフロアに花散る場面の普遍的な美しさは、特に印象に残る。
そうしたバランス感覚が、本作を(重度の)経年劣化から救っていた(エンドロールの曲チョイスは微妙だが)。
また長回しのカットも頻繁に挿入されている。