MasaichiYaguchi

「また、必ず会おう」と誰もが言った。のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.4
人はその場を取り繕う為や良い格好する為に嘘をつく。
その行為で誰かが傷つく訳でもない他愛無い嘘。
そんな他愛無い嘘で東京に行く羽目になった熊本の高校生である香月和也は、東京で置き引きに遭ったり、帰りの飛行機に乗り遅れてしまったことにより、生涯忘れられない「心の旅」をする。
主人公の和也をはじめとして、この作品の登場人物は何処にでもいそうな普通の人々。
この普通の人々によって綴られるストーリーでは、事件が起こる訳でも活劇が繰り広げられる訳でもない。
それでも、彼らによって紡がれる一つ一つのエピソードは心に沁みてくる。
学校で「浮いたやつ」にならないよう嘘をつき続ける和也が、東京から帰る旅で出会った人々、空港で途方に暮れていた彼に救いの手を差し伸べた田中昌美、その昌美から和也がプレゼントを渡すように頼まれた静岡に住む元夫の秋山壮介、更にその後の帰路の途中に知り合ったデコトラ運転手の柳下吉治、その友人の島津純、そして柳下の甥っ子・柳下亮平。
和也が出会ったこれらの人々は何かしら問題を抱え、悩み、葛藤しながら生きている。
そして和也自身も家庭や学校に自分の「居場所」を見出せずにいた。
都会では厄介な事や人を避けて生きる人が大半だと思う。
しかし、この作品に登場する人々は地方出身のこの若者に関わり、人生の先輩として叱咤激励したり助けてあげたりする。
そして皆が別れ際に「また、必ず会おう」と告げていく。
「一期一会」の中で紡がれる人情の機微や人生教訓の一つ一つが、この若者の「生きる力」になっていく。
「可愛い子には旅をさせろ!」
この作品を観て、この言葉を思い出してしまいました。