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ねこにみかんのarchのレビュー・感想・評価

ねこにみかん(2013年製作の映画)
1.1
久しぶりに引いたぜ!最初の何気ないモンタージュからもうダメな感じが醸し出されていてある意味凄かった。あの場面1つで、この映画が出てくる登場人物を捌けないことが証明されてしまっているかのようでびっくりする。
反則技として文字情報として全員のあだ名や関係性を列挙するが1度の鑑賞でそれを覚えられる者など誰がいるのだろうか。そう説明しなきゃいけないことを恥じて欲しいし、それが単なる「観客に示しましたよ」のポーズでしかないことに気づいて欲しい。


ともあれ、そこがこの映画の一番の悪い所なんかではない。もっと酷いのは映画として「普通じゃない家族の形」を通して、一般的な価値観から外れた人に視座を向けたハートフルな人情ものにしようとしながらも、根底に「家族」、「結婚」、「女性」への凝り固まった思想があるが故に、典型的な家父長制最高!な映画になっているところだ。
例えば
・「結婚」する上で、家族の許可がいるのか。別にそのパートナーの家族になるという意識は必要じゃないのではないか。
・「家族」はひとつ屋根の下にいなければならないか。別に別居しててもいいんじゃないですか?
・「不登校」はその不登校の理由関係なく、学校に居なければならないのか
・「女性」は結婚すべきなのか
などの旧態依然とした考え方への疑問符が全く見当たらない。映画は多様な生き方があるよねという面をしているが、そもそも「家族」という言葉、形に固執して「絶対的に良い概念」として使用されていて、そこからよくもう分からない。
主人公の真知子は内縁の妻の1人が、自宅に男を連れ込んでることにいきなりキレる訳だが、正直そこがまず分からない。その行為と「子供が放置されていて、大人が勝手してる」(この真知子のキレる部分もよく分からないが)が結びついてない。
子供がいないタイミング(いない場所)出やってて、別に婚姻関係がある訳でもないんだから人が口出すところじゃないだろ。またそういった真知子の感情的になってしまう部分と彼女バックボーンが広義の「家族幻想」という形でしか全く結びつかないため、ドラマがない。
まちこのお父さん、10分で退場するし特に話も面白くない。彼は一般的な価値観代表みたいな面で登場するけど、登場が短いし、彼らの家族ノカタチの根本的な欺瞞にまで踏み込まない姿勢の為全然機能してない。

ここは女の園だとかいって、父親だけ別で住んでいるが、それこそ家事全般や子育てを全任せして、飯だけ食べに来る、美味しいところだけかじりに来る典型的な家父長制じゃん。


こんなにも「家父長制」を温存しよう!な話をない気がする。なんなら「一夫多妻制」もアリ!になりかねないの正気とは思えない。


この映画の白眉は猫がゲロだか毛玉だかを吐いてるシーン。あれが観客の総意です。
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