ちろる

セッションズのちろるのレビュー・感想・評価

セッションズ(2012年製作の映画)
3.8
身障者の性の問題については、「37セカンズ」で深く考えさせられたけど、
また、巡り巡って同じテーマの作品に出会えるとは思っていなかった。

あの時にチラッと登場したのが渡辺真起子さん演じたセックスワーカーがとても印象的だったが、このヘレン・ハントの体を張った演技が、とんでもなく神々しくて素晴らしい。

首から下が動かないマークが38歳にしていよいよ童貞を卒業する過程をとても丁寧に描いている本作。
興味はあるが、セックスに対する怯えがある、マークにとって欲望よりも恐怖の方が大きい。
それでも男の機能は正常に反応するわけで、健常者の同世代の男のように性の快楽を知りたいと願う気持ちで揺れ動くマーク。

マークの心と体の第一歩を後押しするセラピストのシェリル。
セックス・セラピストという職業に誇りを持ち、そしめシェリルの旦那もその職業を認識しているというのは驚愕だったけど、その事も含めてそういう職業が世に認められるために必要な描写だったと思う。

シェリルがマークと最初にベットを共にしたシーンはあまりにも神々しくて、こんな美しいベッドシーンがあるだなんて感動して涙が出た。
鉄の肺と呼ぶ機械からほとんど出られない不自由な生活の中で、マークの見えた世界はどれだけ広がったのだろうか?

踏み込めるか踏み込めないかは状況によって変わってくるけれど、純粋で、 ロマンチストなマークに、関わった誰もが、彼に心惹かれていた事は間違いなく、その事が自然と伝わるジョン・ホークスの魅力的な演技も印象的。
セックスの経験があるかないかで、その後の自信とつながっていくわけで、
タブーに切り込みつつも、そこを無駄に強調せずにとある男の「愛の軌跡」として見せてくれていたのがとても素敵でした。
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