【第34回カンヌ映画祭 女優賞】
『日の名残り』『ハワーズ・エンド』などのジェームズ・アイヴォリー監督作品。イザベル・アジャーニは本作でカンヌ映画祭女優賞を受賞した。
イザベル・アジャーニ、というよりやはり本作で輝いているのはマギー・スミスだろう。彼女はもうエレガンスの極み、画面に登場するだけで上品になる。
残酷な愛の物語をジェームズ・アイヴォリーならではの上品さで包み込んだ作品で、パリで繰り広げられるこじれた愛の四重奏が語られる。
W不倫で愛し合う二人と、それを知りつつも不思議に男を支える妻、事実を知り女を捨てる男…
マギー・スミス演じるハイドラー夫人は駆け引きのようにその関係を眺める。しかしそこに『危険な関係』のような下世話さはない。あくまでも困ったように眺めるだけ。
1920年代のパリにいるとしか思えない美術や衣装が素晴らしく、一つ一つが絵画のよう。上品な演出でまとめ上げたアイヴォリーはやはり優れた作家だ。