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ワイルド・スピード EURO MISSIONのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.4
 スペイン・カナリア諸島、子供が生まれたという報告を受けたブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)とドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)は崖沿いの細い道を抜きつ抜かれつの展開で病院に向かう。待ち構えるエレナ・ネベス(エルサ・パタキー)は笑顔で迎え入れるが、ブライアンはまだ父親になった実感がないまま、緊張した面持ちで妻ミア・トレット(ジョーダナ・ブリュースター)と赤ん坊の待つ病室へと向かう。生まれて来た子供は男の子で、「ジャック」と名付けられた。一方その頃、ロシアのモスクワでは僅か90秒間の間に軍隊が襲撃され、何億円もの価値をもつチップを奪われる事件が発生する。DSS(アメリカ外交保安部)の捜査官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)は新たな相棒であるライリー・ヒックス(ジーナ・カラーノ)と共に捜査にあたり、ある男の犯行に間違いないと断言する。前作『ワイルド・スピード MEGA MAX』においてレイエスの大金を奪ったチーム・ドムの面々は世界各地で悠々自適の生活を送るが、ドムの元にホブス捜査官が1枚の写真を持って現れる。そこに写っていたのは、死んだはずのドミニクのかつての恋人であるレティ(ミシェル・ロドリゲス)だった。

 『ワイルド・スピード』シリーズ第6弾。一度は裏稼業に足を洗ったはずのチーム・ドムがかつての最愛の恋人レティの敵側への寝返りにより再び結集するのだが、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』のリコ・サントス(ドン・オマール)とテゴ・レオ(テゴ・カルデロン)のレゲトン・マリアッチ・コンビが微妙に間引かれていて泣ける 笑(彼らは最新作に再登場するとの専らの噂である)。ホブスが追う悪の組織のボスであるオーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンズ)は元イギリス空挺部隊SASの少佐として戦車を操ったプロ中のプロで非情な男なのだが、ジャスティン・リンの物語は相変わらず敵役の描写が極めて薄い 笑。ブライアンはレティをブラガに引き合わせた負い目から本国LAに戻り、マイケル・スタジアック捜査官(シェー・ウィガム)の手引きでアルトゥーロ・ブラガ(ジョン・オーティス)が収監された刑務所へ潜入捜査を開始する。前作のブラジルの首都リオデジャネイロで繰り広げられる物語からEU統合時代のロンドンへ舞台を移すのだが、肝心要のロンドンの景色はほとんど夜景のみであまり映らないのは難点である。シリーズ初期はストリート・レーサーとして凌ぎを削って来たあくまで車好きの面子たちが、『ミッション・インポッシブル』シリーズや『ダイ・ハード』シリーズのような肉弾戦や滑走路でのアクションを求められる点については、徐々に過激にエスカレートせざるを得ないドル箱シリーズの宿命を感じずにはいられない。

 4作連続だったジャスティン・リンの監督最終作では、シリーズに貢献して来たキャラクターたちの非情な引退通告が幾つも待ち構えている。レティが戻った一方で、シリーズ中期を下支えしたキャラクターたちの次々の退場が何とも寂しい。どんどんファニーなキャラに変化し、ギャグ扱いと化すローマン・ピアース(タイリース・ギブソン)、良く言えば万能キャラ、悪く言えば便利屋的扱いのテズ・パーカー(クリス・"リュダクリス"・ブリッジス)のジョーカーぶりを含め、ジャスティン・リンにはもう少し繊細にキャラクター設定を描き切る才覚が求められていたはずだ。新『スター・ウォーズ』シリーズ3部作がレイア姫(キャリー・フィッシャー)がいる前提で全ての物語が作られていたはずであり、ウォルト・ディズニーは脚本の大幅な改変を余儀なくされる。ましてやユニバーサル・ピクチャーズやオリジナル・フィルムにとっては、W主演の一角であるブライアン・オコナー役のポール・ウォーカーがまさか40歳で天国へ旅立つことなどまったく想定していなかったはずだ。次作でトリプル・ハゲ&マッチョの総決起集会の様相を呈す『ワイルド・スピード』シリーズには、唯一無二のフサフサなイケメンであるブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)の存在が欠かせない。ポール・ウォーカーの存命ありきで次々に行使されたリストラが、少し早過ぎた過渡期となるシリーズ第6弾である。
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