昔、「読んでから観るか、観てから読むか」という惹句が角川映画についていましたが、本作は先に映画を観るべきでしたね。
原作は著作が次々と映画化されている吉田修一。
モスクワ国際映画祭では高く評価されていたようです。意外性のあるストーリー展開が受けたのでしょう。
確かに物語は面白いです。
それは原作の力。
先に原作を読んでしまっていても面白い映画はたくさんあります。
吉田修一原作の作品でも、『悪人』(2010)や『横道世之介』(2013)は面白かった。
原作のパワーを映画に転換できていた。
それは演出力だろう。
作品の統一したムードを維持しながら観客をアッと言わせるテクニック。
力強さともいうのかな。
本作は残念ながらそれが弱い。
真木よう子と大西信満の演技に頼り過ぎた。
二人とも好演ではあるが、たっぷりと間を取った芝居が次第にもたれてくる。
二人で山間の線路沿いの道を歩くシーンなどを遠景で撮ってるシーンなどとてもいいので残念。
映画的にするなら、殺された子供のエピソードにも、もっとフォーカスをあてるべき。
15年前の事件を際立たせたいための作劇なのでしょうが、そうしたほうが物語がずっと映画らしく立体的になったはず。
それから、大森南朋は相変わらずですね。
その大根ぶりが主演二人の好演によってさらに目立ってしまった。
松本人志監督のナンセンス『R-100』(2013)では、その大根ぶりが最大限に活かされたわけだが、シリアス物では気が抜けたコーラだね。
ちょっと今回のレビューは意地悪すぎたかな。
この作品及び大森南朋さんファンの方ごめんなさい。
あ、ラストはいいですよ。
呼吸が心地いい。