ひろぽん

真夏の方程式のひろぽんのレビュー・感想・評価

真夏の方程式(2013年製作の映画)
4.4
ドラマ『ガリレオ』劇場版2作目

美しい海辺の町である玻璃ヶ浦での海底資源開発計画の説明会に招かれた物理学者の湯川。そんな中、彼が宿泊する緑岩荘という旅館の近くで、元捜査一課の刑事の変死体が発見される。これは事故か、殺人か?思わぬ形で様々な人が巻き込まれてしまった事件の悲しき真相を追っていく物語。


手つかずの美しい海が残る玻璃ヶ浦を舞台に、巻き起こる家族愛溢れる悲しき事件の真相がとても切ない。

小説の世界の夏をそのまま体現したかのような夏らしい雰囲気が漂う。雲一つない青い空や透き通る様な青い海がキラキラしておりとても綺麗で心地良い。

子ども嫌いだった湯川先生が理科嫌いで役に立たないと言う少年・恭平に、科学の面白さを実験することによって体験させ、面白さを伝えていく姿がとても良かった。

ペットボトルロケットを海に飛ばし携帯電話を使用して海中の中を見ようとする実験は、トライアンドエラーで失敗を繰り返し試行錯誤して成功するまで修正して何度も挑戦する。その分、成功した時の喜びが半端ないものなんだと感じた。純粋に実験が成功して黒い布の中で喜びの感情を露わにする恭平の純粋な子どもらしいリアクションが癒されるくらい可愛かった。

こんなに微笑ましい少年と学者の夏休みは他にはないだろう。


湯川先生が恭平に対してアレルギー反応を示さなかったのは、純粋に非論理的な行動に疑問を持ち探求していく、物理学者や湯川先生自身に近いものを感じたからではないだろうかと思う。

“分からなくても自分で考えろ。
答えを知った時の喜びがより大きくなる”

湯川先生が恭平に向けたこの言葉は共感できる。現代はネットですぐ調べられるから、自分の力で考えるという力が養われないのではないかと思う。


事件の真相が明かされていく中で家族が互いに守ろうとして庇い合う家族愛の切なさ。夏休みに親戚の家に泊まりに行っただけなのに、不運にも事件に巻き込まれてしまった恭平。
恭平は賢いから事件の真相に気づき自分の行いに対して疑問を持ち考え始め、湯川を探し答えを求める。この描写を見ると大人の無責任な行動により大きなものを背負わせてしまった現実が重くのしかかる。


湯川先生が恭平に向けて述べるこの台詞が何よりも心強く勇気が貰える。そして、答えが出ないかもしれないから一緒に考えていこうという真っ直ぐな思いが優しく心に突き刺さり感動する。


「この夏休み、
君はいろいろなことを学んだ。
問題には必ず答えがある。
だけど、それをすぐに導き出せるとは限らない。
これから先、君はそういうことを、
いくつも経験していくだろう。
それは僕も同じだ。
でも、焦ることはない。
僕達自身が成長していけば、
きっと、その答えにたどり着けるはずだ。
君がその答えを見つけるまで、
僕も一緒に考える。
一緒に悩み続ける。
忘れるな。
君は一人じゃない。」


『容疑者Xの献身』も大好きな作品だが、『真夏の方程式』もそれに負けないくらい好きな作品。毎度の事ながら悲しく切ないが、温かい余韻が残る。そんな東野圭吾作品がたまらなく好きだ。


“仮説は実証して、始めて真実になる”
ひろぽん

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