ドント

ガッチャマンのドントのレビュー・感想・評価

ガッチャマン(2013年製作の映画)
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 2013年。劇場で観て「とてもキツい」となって約10年、いま観たら良さが見つかるのではないのかと思い立って見直した。とてもキツい。侵略者ギャラクターによって存亡の危機に瀕していた人類の最後の希望、それが、科学忍者隊ガッチャマン!
 何がキツいかって、ヒーローもののワンダーがないんですよ。悪と対峙するヒーローというお話をまるで信じていないので、色恋とか正義・悪とか無駄に練った設定とかいうモノでもって映画を動かさねばならないと思っている。ほいでもって色恋とか正義・悪とか無駄に練った設定とかをね、全部言葉で説明するわけです。逐一、全部。ついでに葛藤や感情も。
 序盤のね、パンジャンドラムと飛行アクションはそんなに悪くないんですよ。そんなには。若干なりともワンダーがあるから。ビルを利用した超人アクションとかアイデアが光るなぁと思う。あと敵味方のスーツもかっこいいと思うの。CGは山崎貴率いる「白組」なので結構リッチですね、うん。東京の街を横切るパンジャンドラムにマイゴジを想起したりもする。ここは白組の映像技術資料としては重要かも。
 けどそこからね、ヒーローアクションが終盤までない。60分くらいない。代わりにお話はある。けれどドラマがない。設定と背景の開示だけがあり、人間関係の勘定合わせばかりが行われて、そういうのが全ていちいち台詞で語られる。クライマックスも適宜、設定や心境の説明が入る。しかもあなた、健やジョーをはじめとして立っているキャラが誰一人としていないときた。アクションもセットも何だかどんどん侘しくなっていく。
 これが面白いわけないのである。ビックリしますよこの味のなさ。時間が進むごとに味が薄くなって下がりきった所で終わるのでドンヨリした気持ちになる。ネタにできる部分や愛らしい部分もないんだから珍味としても楽しめない。役者陣もまるで魅力的に撮られていないので「でも剛力彩芽は可愛かったし」とか「けど松坂桃李はイケてたよ」とも擁護できない。変なアーマー姿になってモクモク煙が出てる綾野剛はちょっとだけ面白い。あと存外にカネがかかってるあたりが悲しくも面白い。
 邦画の悪い部分を凝縮した一本と言えるだろうか。こういうのと比べたらアレとかコレとか、「まぁ事が起こり続けるだけいいか……」とか「まぁこのふたりがエモいからいいか……」と許せてしまうので、ボトムラインのひとつとして観ておくというのもアリかもしれない。これまで作られてきた、そしてこれから作られていく無数の映画に呑まれて消えていくであろう作品である。お疲れ様でした。
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