ねーね

アンチクライストのねーねのレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
3.1
ラース・フォン・トリアーの鬱三部作のうちの一作目とされる本作だが、あまりにも衝撃すぎて点数をつけていいのかどうか戸惑う。

序盤の夫婦の営み、窓から落下する子供までのスローモーションシークエンスは、残酷なまでに美しく目を奪われた。
ラストシーンで明かされる妻の秘密を知ったあとだと、このシーンの悲しみと虚しさがさらに高まるが、一方でより耽美な魅力を感じてしまう自分もいた。
しかしながら、序盤以降のストーリーは完全にホラー映画だろう。怖すぎて正直トラウマである…

森の中をエデンの園と呼んでいる時点で、明らかにふたりはアダムとイヴを模倣した存在だと思われるが、蛇にそそのかされて赤い果実を食べ追放されたイヴ同様、子供を失って精神に異常をきたした妻は「危ない存在」として描かれる。
(まあ、最終的に追放というか園を逃げ出すのは夫のほうだが)
彼女の行為は到底許されるものではないが、全編通して観ると、子供が生まれてから夫の愛情を感じられなくなった寂しさから、セックスという手段で心も身体も満たすしか方法を見つけられなかった被害者でもあるのだ。
この物語ほど極端でないにしろ、子育てを任されて女としても見てもらえずに孤独を感じる女性は世の中に多いはずで、そういう意味ではかなり世の中の男女の本質を描いた話だと感じた。
だからといって、旦那さんの局部を殴りつけたり脚をぐちゃぐちゃにしたりしてはいけないよ!!!!
でもさ、旦那さんも悩み相談に乗るのが下手くそすぎて、寄り添いが足りないからああいうことになるのよ。妻が子供を虐待するほどメンタルをやられていたことだって、普段からしっかり見てれば気づくはずなのに。
世の旦那さんは、子供だけではなく奥さんのこともちゃんとまっすぐ愛してあげてくださいね…こうならないためにも…

ラース・フォン・トリアーは「女」が嫌いなのだろうかと感じるほど、「女であることの罪」をこれでもかこれでもかと投げつけてくるので、正直女である私もいい気分にはならなかった。
ただあまりに映像が美しいので、見入ってしまったのも本音…
やっぱり、私はラース・フォン・トリアーの映像が好きである。
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